フィリピンでは2020年の3月から新型コロナウイスル感染拡大防止のためのロックダウン(都市封鎖)が行われています。
ロックダウンは特に貧困層の生活に大きな苦悩を与えていますが、中でも最貧困層に属するゴミ山のスカベンジャーにとっては大打撃。
この記事では、フィリピンのゴミ山のスカベンジャーを支援しているグローリアセブが、スカベンジャーがロックダウンによって、どのような苦悩を被っているかをレポートします。
ゴミは運ばれてくるけど売れない
フィリピンのロックダウンは2020年の3月下旬からはじまりました。
個人の外出規制や、企業の一時閉鎖など、強力かつ強制的なもので、2021年の1月末までは、このロックダウンが続くことが決定しています。
でも、ロックダウン中も、各家庭からはゴミは出ますので、ゴミ山には家庭ごみが運ばれてきます。
スカベンジャーは運ばれてきたゴミを、いつものように拾い、プラスチックや金属など、素材ごとに仕分ける作業を継続していました。
しかし、ゴミを買い取ってくれる回収業者が営業を自粛しているため、集めたゴミを換金することができません。
コロナ禍になる以前は、毎週一回、回収業者がトラックでゴミ山にやってきて、スカベンジャーが拾ったゴミを素材ごとに分け、重量を測り、買い取り代金を渡していました。
それが、4月から6月の3か月間は、業者が来なかったためスカベンジャーはまったくの無収入。
その間は、わずかな蓄えと行政からのお米の支援で、なんとか生き延びてきました。
7月以降、少しずつ回収業者がゴミ山にやってくるようになりましたが、コロナ禍で買い取り業者も疲弊しているため、以前のようなお金を得ることはできていません。
ゴミ山に行けない
スカベンジャーには、ゴミ山に家を建てて暮らしている人と、毎日、ゴミ山に通ってくる人のふたつのタイプがあります。
グローリアセブが支援しているゴミ山では、ゴミ山の中で暮らしている人は5世帯で、大半は周辺から毎日ゴミ拾いにやってくる人たちです。
しかし、ロックダウン中は、外出できるのは1世帯で1名のみ、それも週に3日と定められている。
ゴミ山に通っていたスカベンジャーは、この規制のため、仕事が大幅に制限されました。
例えば、コロナ禍以前は、父親、母親、そして子どもの3人で、毎日ゴミ拾いをしていたので、一か月の延べの作業人数は90名。
それが、4月以降は1名で週に3日間になったので、延べ12名。
いつもの8%の労力でゴミ拾いの作業を強いられていますので、収入は大幅にダウンします。
子どもが働けない
ゴミ山で作業をしているのは大人だけではありません。
グローリアセブは5年間、フィリピン セブ島にある4か所のゴミ山を見てきましたが、スカベンジャーの3割は12歳以下の子どもです。
子どもたちは親と一緒にゴミを拾い、家計を助けています。
それが、ロックダウンによって、20歳以下の人は、目的にかかわらず完全に外出禁止になってしまったので、ゴミ山で働くことはできません。
もし、外出したところを役場や警察に見つかってしまえば、子どもの親は罰金か、ヘタをすれば警察へ連行されてしまいます。
子どもがゴミ山で働くことに、反対する人もいると思います。
でも、深刻な貧困問題を抱えているフィリピンでは、子どもが親の仕事を手伝うのは当たり前と言う文化。
子どもが働けない分、親の仕事量は増えます。
街に出る交通手段がない
2016年頃まで、セブのゴミ山は比較的市街地の近くにありました。
それが、環境問題などで市街地のゴミ山は取り壊しや封鎖となり、2017年以降、ゴミの集積所は周辺に住民のいない山間部に移されるようになりました。
街からは車で30分ほど。到底歩いて行ける距離ではありません。
ゴミ山の中で暮らしている母親に話を聞けば、街に出て買い物をするのは2週間に1回程度とのこと。
移動手段は、やってきたゴミ収集車に乗せてもらうか、バイクタクシー。
バイクタクシーとは、普通のオートバイの後部座席に乗り、距離に応じて料金を支払う、フィリピンでは一般的な乗り物ですが、ロックダウンの規制によって、バイクタクシーの営業は認められなくなりました。
スカベンジャーは、街へ出る交通手段を失い、生活物資を購入することができません。
生活物資が運ばれてこない
交通の便が悪いゴミ山に、週に1~2回、食糧品や日用品を積んだトラックがやってきて、スカベンジャーにモノを売っていました。
肉や魚、野菜などの食糧品から、衣類や洗剤などの日用品まで、運んでくれる業者は、スカベンジャーの生活にとって欠かせないものでした。
しかし、ロックダウンによって、外出や営業が制限されて以降、食糧や日用品が運ばれてこなくなり、スカベンジャーの生活に大きな打撃を与えています。
街に出て買い物もできない。物資は運ばれてこない。そして、収入は減る一方。
フィリピン政府は、スカベンジャーを含めて、貧困層の生活支援を行ってはいますが、そもそも途上国のフィリピンは国家予算が少なく、貧困弱者のスカベンジャーは、コロナのために甚大な被害を受けています。
スカベンジャーへの支援活動
グローリアセブでは、ゴミ山の子どもたちへの食事支援や就学支援を2015年から行っています。
そして、ロックダウン中も、セブでボランティア活動をつづけています。
2020年は、今までのような支援活動をすることはできていませんでしたが、クラウドファンディングで資金を調達し、スカベンジャーへ食糧を配給したり、子どもたちへ学用品や衣類を配る活動は、継続的に行っています。
フィリピン政府は、「コロナウイルスのワクチンが接種できるようになれば、今までの社会に戻れる」と言っていますので、それまでは、ゴミ山のスカベンジャーに対して、規制の許す範囲での支援を継続していきます。
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