フィリピンの市民社会

自立と自発的に社会参加できる市民社会

市民社会とは個人の自由と平等によって成り立つ社会のこと。
 
それはお金持ちでも貧困でも、資本主義社会の元に自由と平等が保証され、仕事、教育、言動、そして生活が自由に営むことのできる社会。
 
しかし、国際社会、特に途上国では貧困層が自立していくことが難しい社会構図で、市民社会が確立されているとは言えません。
 
 
国際社会問題に取り組んでいるNGOの役割とフィリピンの市民社会の問題について。

発展途上国フィリピンの社会構造と問題

日本人には身近な国 フィリピンが発展途上国だとは意外に感じる方も多いと思います。
 
首都マニラは高層ビルが立ち並び、オフィス街、住宅街が広がり東京の景観と同じ。
実際マニラの人口は約1,200万人で東京の1,400万人と大差ありません。
 
 
しかし貧困が大きな社会問題になっているフィリピンは経済、社会、文化、そして教育面で途上国。
 
 
フィリピンの国家統計局が2013年に公表したデータをご覧ください。
 
フィリピンの平均世帯年収 23万5千ペソ
上位10%の裕福層 71万5千ペソ
下位10%の貧困世帯 6万9千ペソ
 
 

富裕層は国民平均の3倍の収入、貧困世帯は3分の1で、上位と下位の所得格差は10倍。
国民は一部の裕福層と圧倒的多数の貧困層に二極化され中間層はごく少数。
 
 
裕福層は小高い丘の上に豪邸を構え、多数のお手伝いさんと運転手を抱え暮らしています。
彼らは代々政治家の家系や不動産事業、海外事業などで成功し富を得た人たち。
 
 
 
民主主義の国フィリピンでは4年に一度選挙が行われますが、家柄や人脈、ときに汚職で政治家が選ばれますので何十年も続けて同じ家系から政治家が選出されています。
 
政治家になると大きな利権が生まれ家族や血縁者までその恩恵を受ける。
 
 
フィリピンはいま不動産バブル。
高級コンドミニアムやホテル建設のラッシュで、土地所有者やデベロッパー、不動産業を営む資産家には大きな収益がもたらされています。
 
コンドミニアムのオーナーは自分が住むためではなく投資目的に購入し、その中には日本人も多く含まれています。
 
 
中東諸国や香港、アメリカ、オーストラリアなど海外に出稼ぎに行き多くの富を得ているフィリピン人もいます。
フィリピンのGDPの10%もが海外からの送金で占められています。

フィリピンの市民社会

貧困家庭に生まれたら抜け出せない現実

国民の25%が貧困と言われるフィリピンでは路上生活者やスラムで暮らす国民も大勢。
 
貧困層は自分の代で貧困になった訳ではなく、親もそのまた親も貧困で貧困生活から抜け出す術を知りません。
ゴミ山で生まれた子は一生ゴミを拾い続け、路上やスラムで生まれた子は物乞いや物売りで収入を得ます。
 
 
路上での物売りで得られる収入は一か月1万2千ペソほど。
これは売上で仕入れ値を差し引くと約半分。
 
 

貧困層は十分な教育を受けていないため知識が乏しく、自分の知っている狭い社会で経済活動を続けてます。
貧困世帯に生まれた子はそれだけで、自由と自立が前提の市民社会から取り残され、一生を貧困社会で暮らし、そしてその子どもも親と同じ道を歩みます。
 

フィリピンの市民社会

市民社会を阻む宗教の教え

意外かもしれませんが個人の自立を阻む要因のひとつにカトリック文化が挙げられます。
 
フィリピンはアジアで唯一のカトリックの国。国民の80%がカトリック信者。
日本のキリスト教信者が国民の1%と比較したらどれだけ浸透しているかがわかります。
 
 

カトリックの教えは分かち合いと助け合い。
困っている人がいたら自分が多少の犠牲になっても相手を助ける文化です。
 
一見すばらしい教えに聞こえますが、これが市民社会で大切な自立を阻んでいる要因。
 
 
助けられる立場になったら、自分が何もしなくても誰かが助けてくれる。
食事やお金を与えてくれる、と考えてしまいます。
 
 
この考えは市民社会の前提となる個人の自立を阻害しいつまでたっても自立せず人に頼る生き方しかできない国民を助長します。
 
もちろんキリスト教やカトリックはすばらしい宗教のひとつ。
世界には大勢の信者がいますがこのような側面もあるのです。
 

NGOの役割は自立サポート

フィリピンの経済と二極化された社会について説明してきましたが、それではNGOができること、役割はなんなのか。
 
それはズバリ、貧困層が自立できる仕組みづくり。
 
 
例えば路上で物乞いをしている子にお金を渡すことは簡単です。
困っている人たちに寄付をするのも難しいことではないでしょう。
 
でも、それは一過性の支援で貧困層の自立を助けることにならないどころか、また誰かに恵んでもらえると自立を阻む行為になるかもしれません。
 
 
個人の支援ではそれも良いかもしれませんが、NGOの役割は一過性の支援ではありませんので貧困世帯の人たちが自立して生きていけるような仕組みを考え、実行することが大切になります。
 
 
教育の機会提供
収入支援
 
フィリピンでは多くの日本のNGO、NPOが活躍していますが、彼らは継続的な教育または収入のどちらかをテーマに活動しています。
 
貧困層の子どもたちが学校へ通うための支援
子どもたちへの直接的な教育活動
フェアトレードなどモノづくりを通した貧困世帯の収入支援
 
 
貧困を減らすためには、自立して生きていける人間を育てることが大切です。
NGO団体では独自に様々な支援を行っていますが、それらはすべて自立支援につながる活動です。
 

フィリピンの市民社会

国際社会問題に取り組むNGOの課題

国際ボランティア団体同士でどのように支援のすみ分けや連携をしているのですか?
良くいただく質問です。
 
グローリアセブはフィリピンのセブで活動しています。
セブには日本のNPO、NGOだけでも10団体ほどが活動していますが、特に支援のすみ分けや連携は現状行われていません。
 
 
子ども支援を取っても、グローリアセブのように貧困の子どもに最低限の教育を提供する団体から、優秀な子に絞って支援をしている団体もあります。
 
どの団体も価値ある支援を行っていますが、これからはネットワークをつくり情報共有を行うことで、より効率的、効果的な支援を行っていくことが課題になりそうです。
 
 
もうひとつの課題は運営資金。
 
NGOなどボランティア団体の活動資金は事業収入、寄付金、助成金、そして会費によって賄われています。
 
事業収入とは商品の物販やボランティアツアーの催行。
寄付金と会費は個人、または企業からの支援ですが、安定的な収入を得ることができないと現地で継続的な活動が滞ってしまいます。
 
 
NPOやNGOへの寄付には懐疑的な方もいると思いますが、少なくともセブで活動している団体は適正に有意義にみなさんからの寄付を現地支援に充てているばすです。
 
 
事業や活動内容をホームページやブログで丁寧に伝えていくことも課題です。
 
クローリアセブではボランティアの参加費用を貧困世帯の子どもの支援資金に充てています。
 
 
 
日本は世界一便利で住みやすい国。
しかし世界に目を向ければ国際社会問題を抱え、国民の多くが自立できず貧困に苦しんでいる国がたくさん。
 
 

もしあなたが、国際問題や途上国の貧困社会を自分の目で持て見たいと思うのでしたら、海外ボランティアに参加してみてはいかがでしょうか。
グローリアセブでは、フィリピン セブ島でボランティアを受け入れています。
 
 
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