国際協力団体の失敗で知る本当に求められる支援活動とは

フィリピンのゴミ山

失敗も成功も一喜一憂しない

フィリピンの貧困の子どもたちの食事と教育を支援している国際協力団体 グローリアセブ。
 

2013年からのセブ島での支援活動期間中、目標を達成した活動、そして思う通りにいかず失敗した支援活動もあります。
 
 

成功とは小さくても継続できた支援。

 

失敗は目標は正しくても何らかの理由で継続ができなかった活動。

 
 

国際支援に限らず失敗は日常誰にでも。
大切なのは成功や失敗に一喜一憂せず、経験を基に改善しながら支援を継続していくこと。

 

 

これから国際協力活動に関わろうと考えている大学生へ、
グローリアセブの活動事例を通して国際支援の実情と問題点について説明します。

求められている子どもの健康と教育

フィリピンの子どもは3人に一人が飢えています。
世界で9番目に発育障害の子どもが多い現実。
 

飢餓と栄養失調で免疫力が低下し下痢、感染症、肺炎を引き起こします。
 

そのため5歳未満の子どもの死亡率は約3%
日本の子どもの10倍の数値です。

 

 

貧困のため義務教育すら受けていない母親も多く、健康や栄養に関する知識が乏しく子どもを健全に育てることができません。

 

 

グローリアセブではこのようなフィリピンの問題点を調査し、子どもたちへの食事と教育の支援活動をスタートしました。

 

栄養のある食事を提供する。
学校へ通学するための奨学給付金の提供。

 

活動はこのふたつ。

 

 

スラム街では町役場と共同で、毎週子どもたちへ温かな食事の配給。
ストリートチルドレンが学校へ通うための就学金の給付と週末の教育活動。

 

 

現在も支援は継続していますが、成功ばかりではなく問題も発生しています。

 

予算と人的な不足による活動の制限
支援していた子どもや地域が突然消える
フィリピン人と日本人の考え方の違い

 
セブ島のスラム街

1,000人の子どもたちへ食事支援

グローリアセブではスラム街とゴミ山の子どもたちを対象に温かなごはんを配給しています。
一回の配給人数は300人分。
 

 

栄養価を考え野菜と肉を混ぜ、フィリピンの子どもが好きな甘い味に調理したごはん。
 

配給開始から15分でなくなってしまいます。

 
 

食事を待っていた子どもたち全員には提供できません。
また、栄養価の高い食事を提供できるのも一か所につき週1日。

毎日、異なるスラムで支援活動を行っているため、子どもたちにとっては週に1回だけの食事となっています。

 

 

役場に依頼して食事を準備してもらっている地域もありますが、ゴミ山などほとんどのスラムではグローリアセブが食事を持参して配給しています。

 

 

毎日、数か所の地域で同時に支援活動を行うのは現状では人的にも予算的にも無理。
子どもたちは待ってくれているのに、それができない歯がゆさが。

 
 
 

だったら地域や子どもを絞って毎日支援したら。
こんな考えもあります。

 

グローリアセブが現在、食事配給をしている子どもの数は週に1,000人。
数十人の子どもに限定し毎日支援するか、週一回でも1,000人の子のお腹を膨らませてあげるか。

 

 

どちらが正解かはわかりませんが、グローリアセブは支援する子どもの人数を重視しました。

 

 

 

フィリピンでは数千万人の子どもが栄養失調です。
 

NPOやNGOなど、多くの国際協力団体が草の根活動で一人でも多くの子どもを支援していけば、数十年後、子どもたちは救われるはずと考えたからです。

 
セブのストリートチルドレン

奨学給付金で将来に希望を

路上で物売りをしているストリートチルドレン
スラムに住む子どもたち

 

グローリアセブでは貧困で学校に通うことが困難な子どもたちに返済不要の奨学金を給付しています。
 

 

公立学校は授業料が無料とは言え、制服代、文具代、PTAなど細かなお金が掛ります。
実は一番重荷になるのが昼食代と通学費。
制服や文具などはもので支給し、毎月掛る費用は現金で給付しています。

 
 

 

土曜日には奨学生を対象に公園で青空教室を開催。
勉強が遅れがちな子どもたちに英語と道徳を教えています。

 

勉強だけではなく、悩みや生活上の問題などを聞き、コーディネーターがアドバイスします。

 
 

母親とも毎月の保護者会で話し合い家庭の悩みや問題点を聞き出来る限りのアドバイスを行っています。
子どもの担任先生とも会い、近況や勉学のヒアリングを。

 

 

 

奨学生とグローリアセブは家族のような関係だと思っているのですが、毎年数名の奨学生がドロップアウトしてしまう現実。
 

その理由は
学校に行かなくなった
子どもが家出した
家庭の事情で遠くへ引っ越した

 

 

 

引っ越しは致し方ないとして通学拒否と家出は由々しき問題。

 

 

学校へ行かなくなってしまった理由の大半は親にあります。
フィリピンの子どもは親には逆らいません。
 

母親が学校へ通えと言えば行くし、家の手伝いをしろと言えば行きません。
 

 

保護者会議では母親へ教育の大切さを毎回説明していますが、生活苦のため教育より今日の稼ぎを選んでしまう。
母親は面従腹背。

 

 

学校に行かなくなった子の母親は保護者会議にも欠席するように。
なんだかんだと言われるのが嫌だから。

 
 

 

親が放任すると家出してしまう子も。
友達の家に居候して自宅には帰らない。
人生の目標を失い学校にも行かなくなる。
 

やがて学校を除籍され、帰る家はなく、食事もままならない。

 

 

 

グローリアセブが奨学給付金で支援している子どもの2割程度がそのような道を歩んでしまいます。

 

昨日まで青空教室に通い、笑顔で勉強していた子がなぜ。
 
 

私たちのサポートが十分ではなかったと思います。
ただ、それを引きずっていても国際支援の活動は前進しません。
ひとつひとつの事象には全力で対応し、その結果には一喜一憂しない。
 

国際支援での経験から学んだことです。

 

セブのゴミ山

スラムが消えた日

貧困層が身を寄せ合うように暮らすスラム街。
不法居住者も多く暮らしています。
 
 

自治体も手が付けられず多くのスラムが野放し状態となっていますが、フィリピン政府はフィリピンから順次スラムをなくしていく方針。
 

強制撤去が決まるとスラムの住人は立ち退きを命じられます。

 
 

別のスラムを探す人
故郷に帰る人
マニラなど大都市を目指す人

 
 

 

グローリアセブが支援していたスラムも例外なく、特にゴミ山の閉鎖により子どもたちは親と一緒にバラバラな地域へ移り住んでいきます。
 

支援していた子どもたちが忽然といなくなる。

 

住民の移住が完了すると、コンドミニアムやレジャー施設の工事が始まる。

 

 

 

子どもたちの生活を心配し役場や近隣の住人に移住先を聞きまわり、近くであれば探しにも行きます。

 

でも、もう元の場所には戻ることはできず、別々の場所で生活を始めている子どもたち全員を支援継続することは不可能。

 

 

毎週のアクティビティや食事配給を通して子どもや家族と仲が良くなったとしても、いつ別れが来るかわからない。

 

私たちではどうしようもないことに悩んでいても前進しません。
 
 

グローリアセブが現在支援しているゴミ山は三か所目。
最初と二番目のゴミ山は閉鎖され、現在は誰も住んでいません。

 

フェアトレード

フェアトレードはお金にならない

子どもに対する直接的な支援ではなく、母親への支援も行ってきました。
 

そのひとつが家族の生計に役立つライブリフッド。
モノづくりで得た収入を貧困家庭に還元するフェアトレード活動です。
 
 

ローソクなどの日用品
被服の縫製
アクセサリーづくり

 

 

役場を通して説明会を開き、最初は数十名の母親が参加しましたが徐々に減り現在は数名に。

理由はすぐにお金にならないから。

 
 

貧困層は今日のお金が必要です。
でも、継続的に支援する場合は物が売れて代金を還元する。
 

母親にとっては今日これだけ作ったからその分のお金を。
グローリアセブでは、売れてから代金を支払う。

 

役場の見解もグローリアセブ同様売れてからと言うものでした。

 

 

それによって何人もの母親がライブリフッド活動から離脱していきました。

 

 

 

今日の労働対価は今日欲しいフィリピン人。
活動を継続するために販売と収入のサイクルを円滑につくろうとする国際支援団体。

 

 

この考え方の隔たりが埋まらず、現在は市役所の職員とグローリアセブのスタッフ、そしてボランティアの皆さんで製造しています。
 
 

お金はすぐ欲しい。
わかります、その考え。

 

でも、お金を稼ぐ仕組みを継続していくためには先を考えた活動が不可欠。
この問題の解決には時間を要します。
 

なぜならフィリピンと日本の環境、文化、そして考え方が違い過ぎるから。

本当は寄付が欲しい現実

楽してお金を稼ぎたい。
口にしないまでも心の底ではそう考えている。

 
 

収入を得るノウハウや仕事を提供しても貧困層は長続きしません。
今日の暮らしにも困っていても面倒なこと、疲れることはしたくない。
お金がなければ借りたり、誰かに食べ物を貰えばいい。

 
 

フィリピンの場合、この考え方が根本にあるので、比較的簡単ですぐにお金になる仕事、または食べ物や衣類を寄付してもらうことを考えます。
 

甘えた考えですが、実際これでもやっていけている事実。

 

 

国際支援団体が失敗する理由は大きな目標を掲げ、段取りを詳細に考え、実行しようとすること。
 
 

良い悪いは別にしてフィリピンの貧困層の考えを理解せず自らのやり方を押し付ける。
こうすれば上手くいくと。

 

そしてその支援は継続しない。

 

 

 

グローリアセブでもこれがわかるのに数年を要しました。

 
 

現地で毎日相手と接し表情や仕草を観察し、口には出さない本音を知る。
 

フィリピン人は相手の前では言いにくいことを言いません。
わかりました、と言っても本当は嫌だと思っていることも。
 

対面だからわかることです。

 
 

海外に拠点を置き年間で数日しかフィリピンに足を運ばない国際協力団体でしたら、きっと相手の本当の気持ちまでもはわからないでしょう。

国際協力とは継続

海外の貧困の人たちに対して何か自分にできる支援をしたい。

JICAなど公的団体やNPO、NGOなどの民間団体に就職したいと考えている大学生も多いと思います。
 

最後に、そのような方々にアドバイスを。

 

 

 

・ネットの情報を鵜呑みにせず、短期でも現地に訪れ自分の目で現実を確かめてみる
・大きなことをしようと思わず自分にできる小さな支援から始めてみる
・自分の考えを一方的に通さず現地の人たちと共に悩み、成長していく

 

成功とは継続。
 

それは自分にとっても相手にとっても。

 

 
 

例えば、ストリートチルドレンにお金や物を渡すな、と言います。
それはお金をもらった子どもは、明日も明後日もストリートチルドレンとして物乞いしていくから。

 

 

路上の子どもの将来を考えるなら一時的な支援ではなく、生活や教育に関わる活動を継続的にすること。
それは小さなことでかまいません。

 
 

 

現地の人たちから受け入れられ、継続できる支援の仕組みをつくることこそ真の国際協力です。

 

 

国際協力に関わりたいと考えている人は、まず現地に行って現実を自分の目で見る。
ネットやSNSの情報ではわからない事実を知ることから始めてはいかがでしょうか。