SDGsの目標
SDGs(エスディージーズ)とは、日本を含む国連加盟国の193か国が承認した、よりよい社会を目指すための普遍的な取り組みを指します。

この記事では、SDGsと開発途上国の貧困問題の関係と、SDGsの問題点にスポットを当ててわかりやすく解説します。

グローリアセブは、2013年からフィリピンで貧困の削減にかかわる活動を行っている国際協力団体です。

SDGsとは

SDGsとはSustainable Development Goalsの頭文字をとった言葉で、直訳すると「持続可能な開発目標」です。

簡単に言うと、世界中の人々にとってよりよい社会つくるための国際目標のことで、2015年の国連サミットで全会一致で採択されました。

SDGsのキーワードは「誰一人取り残さない」です。

実は、SDGsが国連で採択される以前、同じようなMDGs(ミレニアム開発目標)という達成目標がありました。

SDGsはMDGsで達成できなかった課題を引き継ぎ、新たな目標を加えてつくられたものですが、SDGsとMDGsには違いがあります。

MDGsが開発途上国がかかえている貧困の問題を解決することにスポットを当てた目標だったのに対して、SDGsは先進国を含めた世界的な経済、社会、環境問題の解決が加わったことです。

よって、SDGsは私たちにとってより身近な目標になったため、テレビでもよく報道されるようになりました。
SDGsの目標は2030年の達成を目指していますが、問題点もありその達成率や貧困の減少状況などを見る限り順調に進んでいるとは言えません。

SDGsの目標とターゲット

SDGsは17の目標と169のターゲットで構成されています。
ターゲットとは具体的な数値目標、または行動目標のことです。

目標の1~6は、貧困の削減や食糧の確保、教育の普及など、MDGsを引き継いだ開発途上国の貧困問題にかかわる目標が挙げられています。

7~12は経済発展にかかわる目標、13~15は環境問題にかかわる目標、そして16~17は社会問題にかかわる目標です。

SDGsと聞くと貧困の削減をイメージする人も少なくないと思いますが、実は目標の6割以上が、経済や環境、社会にかかわるものになっています。

日本のテレビ番組で、エネルギー問題や地球温暖化がよくとりあげられるようになったのもこの目標のせいです。

この記事では、貧困にかかわる1~6の目標を紹介します。
すべての目標を詳しく知りたい方は外務省のHPをご覧ください。

持続可能な開発目標1~6

1.あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる

2. 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

3.あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

4.すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する

5.ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う

6.すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する

おもなターゲット

・各国で定義されている貧困の状態にある人を半減させる

・貧困層と幼児を含む脆弱な立場の人が、栄養のある食事を得られるようにする

・妊産婦および新生児の死亡率の削減

・すべての子どもが無償で質の高い教育を受けられるようにする

・人身売買や女性への性的搾取を排除する

SDGs以降貧困率の低下が鈍化

貧困には、最低限の生活を送ることもままならない絶対的貧困と、周りの人と比較して貧しい相対的貧困の二種類があります。

相対的貧困と絶対的貧困の違いについては相対的貧困と絶対的貧困を知れば途上国の問題点がわかるの記事をご覧ください。

絶対的貧困とは、1日1.9ドル以下で生活している人を指し、世界銀行や国連の数字は、絶対的貧困をつかっています。
(2015年10月以前は、1日1.25ドルだったためSDGsの定義では1.25ドルが採用されています)

たとえば1ドルが110円なら約210円。
一か月にすると約6,000円です。
これは、食事も住まいも教育も娯楽もすべて含めたお金です。

日本では国民の絶対的貧困の調査データはありませんが、世界銀行の2017年の調査では、世界人口の1割が1.9ドル以下の貧困層です。
アフリカ、南アジア、東南アジア、そして中南米では、国民の2割から5割が絶対的貧困と言う国が多く、これらの国々が開発途上国と呼ばれます。

フィリピンの場合ですと、国民の2割が絶対的貧困です。

世界の貧困状況については【世界の貧困】3つの原因と解決のヒントに詳しく書きましたのでご覧ください。

実はSDGsの前身であるMDGsでは、目標が途上国の貧困削減に絞られていたため、日本ユニセフのミレニアム開発目標によると、MDGsが実行されていた2000年~2015年の期間、貧困率は大幅に改善されていました。

・絶対的貧困率 1990年 36%→2015年 12%

・栄養不足の人口 1992年 23.3%→2016年 12.9%
1990年から2015年まで、毎年貧困率が1%幅減少してきましたが、世界銀行の世界の貧困に関するデータによると、SDGsになった2015年から2017年の3年間は0.5%ほどに減少幅が鈍化してしまいました。
新型コロナウイルスのパンデミックが、まだ起きていない期間の数字です。

MDGsからSDGsに代わったこととの因果関係ははっきりしていませんが、気になる数字です。

 

SDGsの問題点

よりよい社会をつくるためのSDGsですが、本来の目標とは少し逸脱したような商業的な利用や、先進国と途上国とのアンバランスなど、問題点も抱えています。

先進国の企業活動に利用

貧困や飢餓の撲滅など、8つの目標すべてが貧困対策だったMDGsに比べ、経済や社会問題など先進国寄りの目標が多くを占めるようになったSDGsでは、弱者救済ではなく、先進国の企業が自社の持続や宣伝のために利用されている場面を見受けます。

日本の経済界でも、SDGsのバッヂを付けたり、ロゴを掲げて企業のイメージアップに利用しているシーンをよく見かけます。

本当にSDGsに対して取り組んでいるのでしたら良いのですが、中には人種差別や弱者への強制労働を強いている国や地域から、原材料を買っている企業も。

SDGsの本来の目標は「すべての貧困を終わらせる」ですが、そのクリーンなイメージを利用して、企業PRにつかわれている場合も少なくありません。

各国の取り組みの姿勢に差

SDGsの目標やターゲットには、明確な数値が記載されている項目が少なく、その多くが、「実践する」「強化する」「促進する」といった、抽象的で曖昧な表現にとどまっています。

また、達成できなくてもペナルティはありませんので、その取り組みや本気度は各国で開きがあります。
2020年現在の目標達成率

上位10か国
1位 スウェーデン 84.7%
2位 デンマーク 84.6%
3位 フィンランド 83.8%
4位 フランス 81.1%
5位 ドイツ 80.8%
6位 ノルウェー 80.8%
7位 オーストラリア 80.7%
8位 チェコ 80.6%
9位 オランダ 80.4%
10位 エストニア 80.1%
GDP(国民総生産)がトップ3の国の順位
17位日本
31位 アメリカ
48位 中国

出典:UN Sustainable Development Solutions Network

達成率が高い国は北欧諸国とヨーロッパで、大国ほど達成率が低い結果になっています。

開発途上国が置き去り

実は、途上国ではSDGsはそれほど話題にはなっていません。

フィリピンの場合も、SDGsへの取り組みがニュースに流れることはほとんどありません。

途上国にとっては自国の経済の発展と貧困の削減がもっとも大きな課題です。
SDGsの考えには同調しても、率先して取り組むだけの余裕はありません。

途上国では経済の発展や貧困削減のための資金を、アジア開発銀行をはじめとする国際開発金融機関や、日本からの融資で賄っている国が少なくありません。

フィリピンでも、道路や橋などのインフラは、日本のODA(政府開発援助)で建設されています。
途上国は援助を受ける立場で、先進国は援助する立場だったMDGsと異なり、全世界が共通目標を掲げるSDGsには、途上国はなかなかついていけません。

SDGsとグローリアセブの取り組み

グローリアセブは2013年から、フィリピンのセブ島で貧困層の支援活動をつづけています。

ストリートチルドレンやスラム街の子どもが、教育を受けるための奨学金制度を立ち上げたり、貧困層の母親を雇用したフェアトレード事業などで、貧困家庭の教育と生活を支えてきました。

当時はSDGsと言う目標はありませんでしたが、いま振り返ると、目標の1~4にかかわる取り組みを行ってきました。

1.貧困をなくそう
・ライブリフッド活動(貧困層の自立支援)

2.飢餓をゼロに
・スラム街での定期的なフィーディング活動
・米や缶詰などの食糧の配給

3.すべての人に健康と福祉を
・医薬品の無償提供
・ヘルスセンターへの協賛

4.質の高い教育をみんなに
・奨学金の提供
・幼稚園、小学校への援助

グローリアセブでは、SDGsの活動に参加しながら、フィリピンの貧困の状況や問題点が学べるボランティアプログラムを用意しています。

国際協力団体のSDGsへの取り組みや、途上国の貧困に興味がある方は、参加を検討してみてください。

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