フィリピンは持続可能な社会をつくる意識が高く、多くの国民が環境に配慮した行動を取っています。
これには、開発途上国ならではの事情もあります。

この記事では、「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」の結果でわかった、フィリピン人のサステナビリティに関する意識と行動について、フィリピンで暮らしている僕の目線で解説します。

サステナブル・ライフスタイル意識調査とは

サステナブル・ライフスタイル意識調査とは、持続できる社会の実現のために、世界の人たちがどのような意識をもって行動しているかを、電通と、電通総研が調査したレポートです。
2021年7月に行われた意識調査2021が、2021年9月8日に公表されました。

調査結果の詳細は、「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」をご覧ください。

サステナブル・ライフスタイル意識調査国
・アジア
日本、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム

・欧米
アメリカ、イギリス、ドイツ

サステナブルとは持続可能な発展

サステナブル(Sustainable)、またはサステナビリティ(Sustainability)とは、直訳すると「持続できる」という意味です。
しかし、広義の意味では、環境・社会・経済の3つの観点から、世の中を持続可能にしていくと言う考え方を指します。

SDGs(Sustainable Development Goals)の頭文字にもつかわれているように、世界を持続可能にしようとする動きの総称です。

リサイクルへの意識が高いフィリピン

フィリピンをはじめ、東南アジアのASEAN諸国は、持続可能な社会活動への参加意欲が高いことが分かりました。
とくにフィリピンは、リサイクル行動を実践する人の割合が多く、環境に配慮したエコバッグの利用率と、詰め替え商品の購入率が、調査国中、いちばん高い結果となっています。

エコバッグの使用率

フィリピンのエコバッグ使用率は87.3%

フィリピンは、プラスチックごみを削減するため、2020年から、スーパーマーケットではレジ袋はつかわれなくなり、紙袋かエコバックを使用しています。
紙袋は無料ですが、エコバッグは有料で50円ほど。
スーパーでは、エコバッグの利用を薦めています。

マクドナルドなどのファストフード店では、プラスチック製のストローの使用が禁止。
飲み物を注文しても、ストローはついてきません。

詰め替え商品の購入率

フィリピンでは、74.3%の人が詰め替え商品を購入しています。

フィリピンにはプラスチックごみを処理する施設がありません。
家庭から出されるプラゴミは、そのまま海や山へ捨てられるため、環境問題の原因となっています。

そのため、2020年から、可燃ごみとプラスチックごみの分別が法規制されました。

それに伴い、シャンプーや洗剤などの液体の日用品は、詰め替え用の需要が高まり、スーパーでは、プラスチック製の容器よりも、詰め替え用のパウチの方が、売り場を占めています。

マイボトルの利用率

マイボトルを持ち歩いているフィリピン人は72.3%

一日中、太陽が照り付ける熱帯のフィリピンでは、こまめな水分補給は欠かせません。
でも、東南アジア諸国では、水は飲用水と、非飲用水にわかれているため、どこでも水が飲めるわけではありません。

レストランに入っても水は出てきません。
ペットボトルの飲用水を注文します。

フィリピン人は、外出するとき、500ml~1リットルほどの水筒を、常に持ち歩いています。

食べ残しの料理を持ち帰る率

面白い調査としては、外食で食べ残した料理を家に持ち帰る率です。

フィリピンでは、レストランで食べ残した食事を、家に持ち帰る人が多く、その率は60.7%。
フィリピン人は、レストランで食べきれないほどの料理を注文をします。
これは、家族のために家に持ち帰ることが前提の量。

飲食店では、残った料理をアルミホイルなどに無料で包んでくれます。
日本では、ちょっと考えられないテイクアウト文化です。

フィリピン人の社会活動への参加意識

社会活動への関与状況
フィリピンでは、環境問題の解決など、社会活動に関与している国民がとても多いです。

特徴的なのは、社会活動を率先しているリーダーや、社会活動を行っている団体のメンバーではなく、サポーターというカテゴリーに入る一般国民が多いこと。
持続可能な社会を推進する組織に所属し、環境改善を訴えるような活動家ではなく、普通の国民が、日常的にサステナブルのための行動をしています。

フィリピンの課題は貧困と飢餓

フィリピン人が考えている社会の課題

フィリピン人の77%が、関心のある社会の課題として「貧困と飢餓」を挙げています。
今回の調査では、12か国中8か国が、関心ある課題として貧困と飢餓を上位に挙げていますが、77%というのは突出した数字です。

リサイクルなど環境に配慮した行動を取っているフィリピン。
本来なら、海洋プラスチックごみや、大気汚染などの問題に高い関心を寄せていそうですが、実際は、環境問題よりも、貧困問題に関心を示しています。

フィリピン政府の発表では、フィリピンの貧困率は約20%。
国民は、持続可能な社会のためには、貧困や飢餓の撲滅がいちばん重要だと考えています。

SNSで社会問題の情報を収集

社会問題の入手先

フィリピンでは72.3%もの人が、SNSで社会問題に関心をもったと回答しています。
東南アジア諸国は、元々SNSの利用者が多いのですが、フィリピンの72.3%は、調査対象国中、もっとも高い数字です。

フィリピンのSNSはフェイスブック。
国や地方自治体、学校まで、国民や住民へのお知らせはFBで行われています。

もちろん新聞やテレビニュースもあります。
しかし、新聞が買えない、家に電気が通っていないなどの事情を抱えている人が多いため、マスメディアよりもSNSの方が、情報が伝わりやすいんです。

開発途上国のサステナビリティ意識

経済意識と行動

日本を含む先進国では、いまの生活を守ることを優先し、フィリピンをはじめ開発途上国では、次世代につなぐための行動をしています。

2015年、国連でSDGsが採択されて以降、日本でもエコバックや詰め替え商品の利用が一般的になってきました。
しかしその行動は、「決められたルールだから」「周りの人がそうしているから」といった消極的な理由からであり、持続可能な社会に関心をもち、積極的に関与している人は少ないのが現実。

理由は、先進国の国民は、公的な意義や将来のことよりも、いまの自分の生活を優先する意識が高いためです。

・社会活動への関与

日本 : 無関心と答えた人 33.4%
フィリピン : 無関心と答えた人 1.7%

フィリピンをはじめASEAN諸国では、個人よりも公的な意義を優先し、サステナビリティのための行動を積極的に行っています。

その理由はふたつ。
ひとつは、現在の生活が貧しく、いまの生活を続けたくないと考えている人が多いこと。

そして、サステナビリティによって経済が発展し、自分の子や孫の世代が、幸せになれると考えているからです。

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