セブ島のゴミ山ではウェイストピッカー(Waste Picker)と呼ばれる人たちが働いています。

2017年頃まではスカベンジャーと言われていましたが、スカベンジャーは差別的な用語だったため、その後はウェイストピッカーと呼ばれるようになりました。

ウェイストピッカーとは直訳するとWaste(廃棄物) Picker(収集人)。
ゴミ山など廃棄物の最終処分場などで有価物を収集する人のことを言います。

ウェイストピッカーは、以前は地域社会から排除された存在でしたが、ゴミのリサイクルに注目が集まる昨今、ゴミ山に集められたゴミを分別、回収しているウェイストピッカーの仕事は、資源の循環に貢献する労働者として社会から見直されています。

この記事では、フィリピンセブ島のゴミ山で働くウェイストピッカーの仕事と生活について、セブのゴミ山の子どもたちを支援しているボランティア団体 グローリアセブが解説します。

 

 

1.セブ島のゴミ山の場所

セブ島のゴミ山は2015年まで5箇所ありましたが、2023年現在、稼働しているのは3箇所です。

  • マンダウエ市 (Mandaue city) 2017年閉鎖
  • イナヤワン (Inayawan) 2016年稼働停止
  • マクタン島 ラプラプ市 (Lapu-Papu city)
  • コンソラシオン (Consolacion)
  • タリサイ市 (Talisay city)

フィリピンでは2001年に「生態学的固形廃棄物管理法」が施行され、環境に配慮していないオープンダンプは稼働できなくなったため、セブ島のゴミ山も減少しています。

参考記事
深刻な環境問題をひき起こすゴミ山がフィリピンから消える日

 

2.ウェイストピッカーの仕事

セブ島のゴミ山で働くウェイストピッカーの仕事は、ゴミ山に運ばれてきたゴミを回収し、ジャンクショップと呼ばれる回収業者に買い取ってもらうことで生計を立てています。

自治体から委託された民間のゴミ回収車が運んでくるごみを拾い、プラスチックや金属などの不燃ごみ、紙や布などの可燃ごみに仕分けし、種類ごとに袋に詰めます。

ビンと缶は、小売店や飲料メーカーから、直接、ジャンクショップに持ち込まれリサイクルされますので、ゴミ山には運ばれてきません。

参考記事
ゴミ山で廃品のリサイクル。子どもの仕事は危険がいっぱい

ゴミ回収車は、朝の2時頃からセブ市内のごみを回収し始め、8時頃にはゴミ山にゴミを運んできます。

ゴミ収集車は朝から午後2時頃まで、15分置きにやってきますので、ウェイストピッカーはその間、ゴミの回収に追われます。

運ばれてきたゴミの回収が一段落すると、そのあとはゴミの分別作業を行い、ゴミの種類ごとにサックと呼ばれる袋にゴミを詰め込んでいきます。
仕事は日が落ちる夕方まで続きます。

ゴミ山には週一回、ゴミの買い取り業者がやってきて、ゴミの種類別に買取価格を決めウェイストピッカーに支払います。

特別な能力や技術が必要ないゴミ拾いというインフォーマルな仕事は、手っ取り早く稼ぐことができるため、地方から家族でゴミ山に移り住んでくる人たちも多いです。

ゴミ山で働いている人たちは、故郷も生い立ちも異なりますので、友達のような仲間関係は箕臼で、また組織にもなっていませんのでリーダーや雇用主もいません。

 

3.ウェイストピッカーの生活

セブ島のゴミ山で働いているウェイストピッカーは、ゴミ山の中に住居を構えゴミ拾いをしている人と、ゴミ山の近くの住居から通っている人がいます。

2023年現在 存在しているセブ島のゴミ山では、山間部にあるタリサイで働く人たちはゴミ山の中で暮らしている人が多く、市街地にあるラプラプと、居住が禁止されているコンソラシオンは、周辺地域から通っています。

山間部のゴミ山で働いているウェイストピッカーの場合、街に出て買い物をするのは二週間に一回程度。

毎日の食料は、食料品を売りに来るキッチンカーから購入するか、代表者がバイクで町まで出て行き、米や水、食料品など仲間の分をまとめて購入しています。

 

4.ウェイストピッカーが抱える問題


ゴミ山の中に住居を構えて働いている人が抱えている問題は主に3つです。

  • 生活インフラが未整備
  • 学校が遠方
  • 不安定な生活

・生活インフラが未整備
ゴミ山は居住地としては非公認の場所ですので、電気や水道、通信などのインフラは整備されていません。

夜になれば真っ暗です。
水は街まで出て行って購入しなければなりません。

また、山間部のゴミ山には通信会社のアンテナも建っていませんので、携帯電話を持っていても電波が届かず通話できません。

・学校が遠方
ゴミ山の中にも、以前は保育園がありましたが、ゴミ山に住むことを助成するということで廃止されました。

ゴミ山で暮らす子どもが幼稚園や小学校に通うためには1時間ほど歩くか、お金を払ってバイクタクシーを利用します。

バイクタクシーは片道100円ほどしますので、登校をあきらめる子どもも少なくありません。

・不安定な生活
ゴミ山で働くウェイストピッカーは、社会保障や法制度によって国から保護されていないインフォーマルセクターのため生活が不安定です。

病気やケガをしても保険が適用されません。
また、ゴミ山での労働は非公認のため、退去命令が突然でる可能性もあります。

5.ウェイストピッカーの将来

ウェイストピッカーは、廃棄物の管理やリサイクルに関して重要な役割を担っていますので、政府は環境産業のひとつとしてウェイストピッカーの労働条件の整備とコミュニティの組織化を推進しています。

例えばマニラのパヤタスにあるゴミ山では、最低就業年齢の設定、許可証のない人の立ち入り禁止、ゴミ山内での居住禁止などのルールが決められています。

これらの施策はウェイストピッカーを管理することに重点が置かれ、ウェイストピッカーの生活の質の向上には至っていません。

しかし、行政の指導下に置かれればインフォーマルセクターから脱却し、今後は彼らの安心や生活の安定を支える社会保障の給付も受けられるようになっていくことでしょう。

グローリアセブでは、セブ島のゴミ山で暮らしている子どもたちに食事を提供したり、家族へ食料や物資の配給、またゴミの仕分けを行う作業場の建設など、ウェイストピッカーの生活の向上に貢献しています。

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