深刻な環境問題をひき起こすゴミ山がフィリピンから消える日

フィリピンのゴミ山
フィリピンの環境衛生資源省(Department of Environment and Natural Resources)は、「生態学的固形廃棄物管理法」を施行して、環境に悪影響をあたえるゴミ処理場(ゴミ山)を、2021年3月をもって閉鎖すると発表しました。
 
以降、環境に配慮していないゴミ山は、フィリピンからなくなります。
 

追記:
2021年5月23日現在
・フィリピン国内の335のゴミ山が閉鎖
・237の衛生埋立地が稼働
発表:フィリピン環境天然資源省(DENR)

 
この記事では、ゴミ山がおよぼす環境破壊の実態と、ゴミ問題の解決策について、フィリピンのスカベンジャーの子どもたちを支援している国際協力団体 グローリアセブが解説します。
 
目次
・ゴミ処理場と環境問題の関係
・急ピッチで進む衛生的なゴミ処理場の開発
・セブのゴミ山の実例
・ゴミ問題の解決策は国民の意識改革から
・まとめ
 

ゴミ処理場と環境問題の関係

日本では、家庭や事業所から出された可燃ゴミはゴミ処理場で焼却され、焼却できない不燃ごみは埋め立て地に捨てられたり、リサイクルに回されています。
 
しかし、焼却施設がないフィリピンの場合、集められたゴミはそのままゴミ処理場に運ばれています。
 
処理場と言えば聞こえは良いですが、実際は山積みに投棄されるだけの状態。
これがいわゆるゴミ山です。
 
ちなみにゴミ処理場、またはゴミ山のことをダンプサイト(Dump site)と呼びます。
 
 
フィリピン国内には約1,000か所のゴミ山があり、その投棄方法によってゴミ山は3つのタイプに分かれています。
 
ひとつが、環境問題に配慮せず、無差別に投棄されているオープンダンプサイト(露天投棄)と言われる処理場。
 
生ごみや有害物など一切分別されず、回収したままの状態で捨てられるオープンダンプサイトは、異臭を放ち、害虫や腐った食品による伝染病、そして流れ出す汚水など、環境に大きな悪影響をあたえます。
 
2021年3月に閉鎖されたゴミ山は、このオープンダンプサイトです。
 
 
一方、オープンダンプサイトに代わって、開発が進められているのが衛生埋立(Sanitary Landfill)と言う環境配慮型の処理場です。
 
衛生埋立場では、ゴミに土をかぶせて異臭や害虫の発生を防いでいます。
また、ゴミの中にパイプを通して、ゴミから流れ出る汚水を管理しています。
 
 
ゴミ処理場はオープンダンプサイトと衛生埋立場の二種類なのですが、もうひとつ、オープンダンプサイトが閉鎖されていく中、苦肉の策でつくられた、ゴミの中継所と言う施設の存在があります。
 
捨て場のなくなったゴミを、市内の空き地に一時的に保管場所をつくりそこにゴミを貯めていきます。
 
そのまま放置することは法律で禁じられていますので、あくまでゴミ処理場が整備されてから運ぶ中継所と言う建前になっているのですが、実際にはそのまま何年も中継所に放置されているケースも少なくありません。
 
フィリピンのゴミ山
 

急ピッチで進む衛生的なゴミ処理場の開発

フィリピンのゴミ処理場は、そのほとんどが環境に害をおよぼすオープンダンプでした。
 
しかし、「生態学的固形廃棄物管理法」の施行によって、オープンサイトは順次閉鎖、または環境に配慮した処理場に改良され、2021年1月現在、衛生埋立処理場は240か所、全ゴミ処理場の約25%まで増えてきています。
 
環境資源省は、2023年までにすべてのゴミ山を衛生埋立地にすると発表しています。
 
 
実は、いままでもゴミ山が閉鎖された例は何度もありましたが、閉鎖の理由は子どもたちのケガを防止するなど安全面への配慮からでした。
 
今回のオープンダンプサイトの閉鎖は環境への配慮ですので、今までとは理由が異なっています。
 

セブのゴミ山の実例

グローリアセブでは2013年から、セブのゴミ山に住んでいる子どもたちの支援を行っています。
 
しかし、その多くが環境を無視したオープンダンブサイトだったために、閉鎖や再開発に追い込まれてしまいました。
 
ここでは、グローリアセブが支援していたゴミ山の状況について説明します。
 
イナヤワンのゴミ山・イナヤワン
日本のJICAの支援によって1995年に開発された衛生埋立場です。
当時はセブ市で唯一のゴミ処理場でした。
 
毎日600トンも出されるセブ市内のゴミの大半が、イナヤワンの処理場に運ばれていたのですが、開発当初に予定していた受け入れのキャパシティを越えてしまい、周辺の環境を悪化させたため、2016年に閉鎖。
 
現在もゴミはそのまま積み上げられていますが、処理場の中にはゴミを運び入れることができないため、ゴミ山の近くに一時保管場所をつくり、そこに置かれています。
 
セブのゴミ山・ウマパット(1)
セブ市の隣町にある海沿いの処理場です。

200世帯のスカベンジャーが暮らしていた処理場には商店や教会などが並び、ゴミ山全体がひとつの街のようになっていました。
 
しかし、一般廃棄物に交じって有害な残留廃棄物も捨てられていたため、高レベルのメタンガスが発生していました。
行政はこの事態を重く受け止め、閉鎖の処分に。
 
 
現在、ゴミは取り除かれていますが、有害物質が捨てられていた場所とあって、その後の開発は進められていません。
 
ゴミ山で暮らしていたスカベンジャーは、近くにあった別のゴミ山へ移り住んでいきました。
 
セブのゴミ山・ウマパット(2)
海沿いのゴミ山で、上記のスカベンジャーが移住した場所です。
 
この場所は、セブの空港とセブ市内をつなぐ橋の近くにあり、周辺には遮るものがないため、外国人観光客にも知られるようになりました。
 
それを嫌ったかどうかは定かではありませんが、管轄する役場の職員が常駐して出入りする人の監視を行ったり、僕たちが写真を撮っているとその理由を聞いてきたりとチェックが厳しかったです。
 
 
このゴミ山も間もなく閉鎖され、跡地にはネイチャーパークがつくられました。
 
また、以前から住んでいた人のために1ヘクタールの畑を提供し、住民はそこで野菜を作って収入を得ることができるようになりました。
 
しかし実際は、そのゴミ山で暮らしていた大半のスカベンジャーは、エコパークの完成を待たずに他の地域へ移り住んでいきました。
 
ゴミ山跡地のネイチャーパークゴミ山の跡地にできたネイチャーパーク
 
 
・コンソラシオン
ゴミ山には、パブリックと呼ばれる、行政が管理している場所と、プライベートと呼ばれる企業が経営している場所の二種類あります。
 
セブ市の北部にあるコンソラシオンはプライベートのゴミ処理施設で、イナヤワンが閉鎖されている現在、セブ市の大半のゴミはここに運ばれています。
 
企業が経営しているプライベート施設では、行政のゴミ山では対応しきれないゴミを受け入れ、行政や回収業者に、その代金を請求します。
管理は厳重で、一般の立ち入りは禁止。
 
 
グローリアセブでは、コンソラシオンのゴミ山でボランティア活動をするために、所在地の役場の村長から許可を得たのですが、最終的に経営している企業からの許可が得られず、断念した苦い経験があります。
 
セブのゴミ山・タリサイ
セブ市内から車で1時間ほどかかる山奥のゴミ処理場です。

携帯の電波も届かない僻地ですが、市街地から離れているために、現在のところ環境問題は起きていません。
 
また、捨てられたゴミに盛り土をするなど、準衛生埋立の対応がなされています。
 
あまりに不便な場所のため、ゴミ山に住んでいるスカベンジャーは10世帯ほどで、その他の人たちは周辺から通いでゴミを拾いに来ています。
 
 
グローリアセブは、毎週、この地を訪れ、子どもたちに食事を提供する活動を行っています。
 

ゴミ問題の解決策は国民の意識改革から

無動作に捨てられるゴミが環境問題に重大な影響をあたえることは論を待ちません。
 
では、フィリピンのゴミ問題はどのような解決策があるのでしょうか。
 
 
まず挙げられるのは国民の意識改革です。
 
貧しい開発途上国では、環境問題への国民の関心は低く、環境の保全を訴えるのは、異臭を放つゴミ山周辺の住民だけと言っても過言ではありません。
 
国民の意識が環境に向くだけで、ゴミ問題は大きく改善されます。
 
 
具体的には、可燃ごみ、有害ごみ、有機物の分別の徹底と、ゴミの削減です。
 
フィリピンでも、中間層以上が暮らす住宅地ではゴミの分別が徹底されていますが、ゴミ箱もないようなスラム街では、分別など行われていません。
それどころか、大人も子どもも道にゴミをポイ捨てします。
 
決められたルールに従い、ゴミをキチンと捨てる習慣を身に着けることが解決策の第一歩です。
 
また、野菜くずや残飯からは温室効果ガスが発生し、地球温暖化につながりますので、そもそもゴミを減らす心がけも大切です。
 
 
国民の意識がかわるだけでもゴミ問題は改善されるハズですが、根本的な解決にはゴミ焼却施設やリサイクルセンターの建設が必要不可欠です。
 
でも、フィリピン政府には資金の余裕も技術力もありません。
 
環境に害のあるオープンダンプサイトが閉鎖されたことは大きな前進ですが、このままですと資金面の問題から、衛生埋立の開発が思うように進まず、一時保管場所だけが増え、オープンダンプサイトは閉鎖のまま放置されるという状態になりかねません。
 
 
フィリピンの環境問題の解決には、国民の意識改革と同時に、日本を含む先進国からの資金と技術援助が必要なんです。
 

まとめ

フィリピンに限らず、乏しい開発途上国では、貧困の削減や食糧問題の解決に多額の予算が割かれるため、環境問題にはほとんど手が付けられていませんでした。
 
しかし、2015年に国連で決定したSDGs(持続可能な開発目標)のゴール7「環境の持続可能性確保」が引き金となって、最近ようやく環境問題にも目が向けられるようになりました。
 

でも、ゴミ山の閉鎖を急速に推し進めれば、そこで生計を立てていたスカベンジャーや子どもたちの生活を脅かすことになるので、彼らの住まいや仕事の確保など、サポートプログラムもしっかり用意してもらいたいと思っています。
 
 
グローリアセブのボランティアプログラムでは、ゴミ山を視察するだけではなく、そこに住んでいる子どもたちとの交流を通して、ゴミ山の現実を知ることができるので、興味のある方はぜひ参加してください。
 
 
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