世界には極度の貧困に苦しんでいる子どもが3億人以上います。
貧困状態にある子どもはアフリカや南アジアに特に多く、毎日が生きていくだけで精一杯の暮らしを強いられています。

この記事では、世界の子どもの貧困の現状を、日本の子どもの貧困と比較しながら説明します。
 

1.子どもの貧困とは


子どもの貧困の基準は世界と日本では異なります。

国際基準では1日 1.9ドル未満で暮らす子どもを貧困と定義していますが、日本は17歳以下の子どもが属する世帯の等価処分所得が貧困線に満たない子どもを指しています。

世界では絶対的貧困といわれる1.9ドル未満の数値が用いられていますが、日本には絶対的貧困の調査データはありませんので、相対的貧困の定義が使われています。

収入から、税や社会保険料などを差し引いた手取りの金額を等価可処分所得といいます。
等価可処分所得が全国民の中間値の金額を下回っている世帯を相対的貧困と定義し、その世帯の子どもを貧困と呼んでいます。

2019年の年間可処分所得の中間値は269万円でした。

2.世界の子どもの貧困

この章では世界の子どもの貧困状況を説明します。
世界の子どもの貧困率ランキングは、相対的貧困率の順位ですが、ここでは国際基準の絶対的貧困率を用いていますので日本は対象外とします。

世界銀行グループとユニセフが、2020年に発表したGlobal Estimate of Children in Monetary Poverty: An Updateによると、世界では6人にひとりの子どもが貧困です。

国連の調査によれば、世界には21億人の子どもがいますが、18 歳未満の子どもの約17%、3億5,600 万人が貧困です。

世界の子どもの貧困は、スーダン、ナイジェリア、コンゴ、ガーナなど、アフリカのサハラ砂漠の南側に位置する国々が最も多く、次いでインド、バングラデシュ、パキスタンがある南アジア、そして中国を中心とした東アジアとつづきます。

世界の貧困の子どもの人数と貧困率
アフリカ(サハラ以南)
2億3,400万人 45.8%

南アジア
6,400万人 10.2%

東アジア
2,400万人 5.9%

3.日本の子どもの貧困率

日本の子どもの貧困率は15%で、7人にひとりが貧困です。(2018年現在)
但し、日本の子どもの貧困率は相対的貧困の率をもとにした数値ですので、絶対的貧困率を基準とした世界の貧困率とは異なります。

相対的貧困率を基準とした場合は、日本の子どもの貧困率は世界平均の13%を上回り、イタリア、ギリシャ、オーストラリア、ボルトガルと同水準です。

出典元:厚生労働省 2019年国民生活基礎調査の概況

4.子どもの貧困の原因


子どもの貧困の原因は、途上国と日本では異なります。
途上国では、国内の紛争や不安定な政治、そして政府にお金がないため貧困層の支援ができないなど国としての問題が要因です。

日本の場合は、離婚やシングルマザーなど、ひとり親家庭に貧困の子どもが集中しています。

ひとり親家庭の収入は母親のみで、その多くが賃金が低い非正規雇用のため、フルタイムで働いても、貧困線以下で労働するワーキングプアの状態。
子どもを十分に養える経済力がありません。

また、ひとり親の最終学歴は中卒や高校中退が多く、子どもを養育するための十分な知識や情報を身に着けていません。

日本の場合、子どもの貧困の原因は、親の経済状況によることが大きいのですが、国としての問題は高齢化による社会保障費が膨らみ、子どもの貧困問題を解決する予算が増えないことも挙げられます。

5.貧困の子どもの特徴

貧困の子どもの特徴は、世界の子どもと日本の子どもとでは大きな違いはありません。

内閣府が発表した「子供の貧困実態調査に関する研究 報告書 令和元年度」によれば、困窮世帯の子どもは、非困窮世帯と比較して次のような特徴があることがわかりました。

  • 母子家庭で母親が稼ぎ手になっていることが多い
  • 家の手伝いをする時間が長い
  • 学校の授業について行けず、クラスの中で成績が低い
  • 朝食や夕食を食べないことが多い
  • 一人で食事をすることが多い
  • カップ麺やコンビニ弁当を食べる機会が多い
  • 頭痛があったり、精神的に不安定な子が多い
  • 親や保護者と過ごす時間が短い
  • 6.子どもの貧困の弊害

    子どもの貧困の弊害は健康障害、教育機会の損失、貧困の連鎖の3つです。

    6-1.健康障害

    十分な栄養が摂れていない貧困の子どもは健康障害を起こすリスクがあり、結果として余命が短くなったり、幼児期の死亡率が高くなります。

    世界の極度の貧困層の半数が集中する5か国の、子どもの出生時の平均余命と5歳未満児の死亡率

    ナイジェリア 53年 11.7%
    コンゴ共和国 59年 4.9%
    エチオピア 64年 6.4%
    インド 66年 5.3%
    バングラデシュ 71年 3.3%
    (参考)日本 84年 0.3%

    データの出典元:ユニセフ(2013年調査)

    6-2.教育機会の損失

    子どもが幼稚園から高校まで通うための教育費は、公立で262万円、私立だと1,235万円と言われています。
    この費用には通学費やお弁当代などは含まれていませんので、実際にはもっとかかることでしょう。

    しかし、貧困の子どもの家庭は収入が少ないため、食費や住居費など、生きていくために必要最低限の経費を支払うと、教育費を捻出することが困難です。

    世界の貧困国では、子どもの34.6%が学校に通っていません。
    教育を受けないまま大人になっても安定した仕事につくことは難しく、また、知識や情報不足で社会から取り残されてしまうなど、生活に大きな影響がおよびます。

    6-3 貧困の連鎖

    国連広報センターが発行している「世界人口白書」によると、世界では年間5,000万人の少女が15歳前に結婚をさせられ、途上国の女性の約18%は18歳未満に妊娠をしています。

    社会経験に乏しく学力も低い親に育てられた子どもは、大人になっても貧困から脱出することはできません。
    子どもの貧困はその子だけにとどまらず、将来にわたって貧困が連鎖していくのです。

    7.子どもの貧困問題を解決する対策


    子どもの貧困問題を解決する対策は先進国と途上国では異なります。

    日本を含む先進国では、子どもの貧困問題を解決する対策として、子どもが勉強をつづけていくための奨学給付金、子ども手当、無料給食、そして親への生活補助金の給付など、子どもの教育と家庭の生活を支援する社会保障に力を入れています。

    しかし、手厚い社会保障は国にお金がある先進国だからできる対策で、子どもの貧困率が高い途上国では社会保障に充てる資金は限られます。

    7-1.開発援助は役立たない

    開発援助とは発展途上国の開発を主たる目的とする政府および政府関係機関による国際協力活動のことで、ODA(政府開発援助)と呼ばれています。

    日本はアメリカ、ドイツ、イギリスに次いで世界で4番目に多い開発援助資金を途上国へ提供していますが、その開発援助金の多くは、道路、橋、トンネルなどインフラ事業に使われています。

    日本から年間37億円の無償資金協力(2020年度)を受けているフィリピンの場合も、インフラや交通網のネットワーク整備、そして災害復旧のために使われていて、子どもの貧困を削減するための直接的な支援には使われていません。

    7-2.途上国は緊急援助が優先

    国際協力団体 グローリアセブが活動しているフィリピンの場合、政府の支援対策は、天災や火災、疫病などで突発的に生活が困窮した国民に対して、食料や水の支給、住まいの提供など緊急で行わなければならない援助が中心になっています。

    貧困の子どもが多いことは政府も理解していますが、その数があまりにも多く、お金もかかるため手が出せない状況です。

    7-3.NGOの役割

    途上国はその国の政府だけでは子どもの貧困を削減することはできません。
    子どもの貧困問題を解決するためには、NGOや企業など民間の草の根的な活動が不可欠になっています。

    フィリピンの場合でも、グローリアセブをはじめとするNGOが、貧困の子どもたちへ奨学金を給付したり、学習補助などの就学支援を行っています。
    これらの活動のひとつひとつは小さいものですが、その数が増えれば救済される子どもたちの人数も増えていきます。

    子どもの貧困問題を解決する対策は、日本国内、そして世界で活動しているNGOの行動によるところが大きいのです。
    しかし、NGOも資金や人材が十分とは言えません。

    NGOの活動へ参加したり寄付をするなど、みなさんひとりひとりがNGOの活動にかかわることで、世界の子どもの貧困を削減していくことができます。

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