まいの 聖心女子大学4年
皆さんはフィリピンセブ島と聞いてどのようなイメージを抱くでしょうか。
年間500万人以上の観光客が訪れるこの地は多くの人が「リゾート」とイメージしていると思います。
しかし、その「リゾート」は島の1%にも過ぎず、残りの99%では家々が入り組み、混み合った日常が広がっています。
私は以前セブ島を訪れた際、そのギャップに大きな衝撃を受けました。
そして、人々の生活のリアルを知りたいと思い、セブ島での長期滞在を考えました。
私がグローリアセブのインターンで明らかにしたかったことは2つです。
①日本人が教育支援を行う意義を学ぶこと
②フィリピン人の幸福度を支える本質を探ること
この2つについて悩み、答えの無い正解を追い求めた6週間でした。
私のようなインターン生を含むボランティア生は、毎週セブ市内の墓地、山岳地帯、水上スラム、ゴミ山など様々な貧困地域を訪れました。
最初は貧困地区の独特の匂いに驚き、耐え難いとまで思いました。
しかし、その匂いの中で生きる人々の前でそのような姿を見せてはならないと自然と受け入れ、彼らのありのままの日常を先入観なく見ていました。
どの地区の子ども達もとびきりの笑顔と包み込む温かさで私達ボランティアを迎えてくれます。
その優しさに何度も救われました。お互い英語が流暢でなかったとしても身振り手振りで一生懸命に会話した思い出はどれも忘れることができません。
このような子ども達と毎週折り紙や工作、玉入れやしっぽ取りなど様々なアクティビティを行いました。
この活動を取りまとめるのは容易ではなく、本当に試行錯誤の連続でした。
まず、子ども達にとって身近ではない日本の遊びのルールを教えることが大変です。
そして、1回の説明では分からない子どもも多かったため、なかなか全員に伝えきれず、もどかしさも感じました。
しかし、事前にもう一人のインターン生やフィリピン人スタッフの方と話し合いを行い、毎回の活動ではサンプルを提示するようにしました。
すると、多くの子ども達が活動を理解できるようになり、ルールの中で子ども達が楽しむ姿が見られて本当に嬉しかったです。
そしてこの子ども達が楽しそうな姿が、何よりのモチベーションになっていました。
しかし、明るく元気そうに見える子ども達も、実際には虫歯や悪化した傷を抱えていて、生活の厳しさを目の当たりにしました。
また、電気や水道が通っていない家が多く、その日常を知ることで、自分の当たり前が決して当たり前ではないことに気付かされました。
ある水上スラムに暮らす家庭を訪問し、子育てをしている母親にインタビューする機会がありました。
生活の様子を伺うと、限られた環境の中でも子どもが健康に成長できるように精一杯尽くす、その姿は日本の母親と変わらないものでした。
国によって価値観や考え方は異なると思いますが、母親が子を思う気持ちは世界共通なのだと学びました。
また、子どもたちへインタビューをした際にも、「家族のために勉強を頑張っている」「家族のためにお金を貯めている」と答える子どもが多くいました。
その姿から、家族とのつながりを大切にし、感謝の心を忘れないフィリピンの人々の良さが表れていると感じます。
フィリピン人の家族の在り方から、改めて私は毎日健康に過ごすことができているのは紛れもなく家族のおかげであると気付かされます。
その感謝を気持ちだけで終わらせず、具体的な行動で示していきたいです。
日を追うごとに、子ども達と端的な会話だけではなく自分の今と将来について会話することが増えていきました。
将来の夢を尋ねると、皆「先生」や「警察官」など具体的な夢を抱いています。
そのキラキラとした表情は、貧困という言葉からはかけ離れているように見えました。
しかし、フィリピンにおける後期中等教育の就学率は77.11%(2021年)にとどまり、その後の正規雇用の少なさ、低賃金も大きな課題となっています。
子ども達の夢を叶えられる未来をつくるには、まず子ども達が学び続けられる環境を整えることが不可欠です。
そして、日本人である私ができることは、特別大きなことではなく、まずは目の前に子ども達への教育支援を持続的に行っていくことだと考えました。
私がこのインターンの目的としていた2つについて、活動を終えた今の結論は次の通りです。
① 日本の豊かな情操教育を伝えることは、異なる国の子ども達に新たな学びを与えるだけではなく、生活の規律や協調性を育む基盤になる。単に知識を教えるのではなく、音楽・図工・体育といった活動、またその基礎となる遊びを通じた「心を育てる教育」こそが日本人が国際教育支援に携わる意義である。
② フィリピンの人々は繋がりを大切にし、日々の暮らしの一つひとつに深い感謝の気持ちを抱いている。その感謝の姿勢が、家族や地域社会の絆を深め、厳しい生活環境の中でも人々を支える大きな力となっている。
私は、この「感謝と繋がり」がフィリピン人の幸福度を支える本質であり、日本人が学ぶべき大切な価値観であると考えた。
決して正解ではありませんが、今の想いを大切に日本で過ごしていきたいと思います。
グローリアセブのインターンは、代表の斉藤さん、スタッフの御二方をはじめ、50名以上のボランティアの方々に支えていただきました。
この夏を絶対に忘れません!
2025年8月9月