学習貧困 9割の子どもが文字を理解できない理由

フィリピンの学習貧困

学習貧困とは、社会的な影響や家庭の事情で、子どもの学習機会が失われ、学力が低下してしまうことをいいます。
 
2020年から2021年の、新型コロナウイスルのパンデミックによって、フィリピンの子どもたちは学習貧困に陥り、10歳までの子どもの9割が、簡単な文字を理解することができなくなったと、世界銀行は発表しました。
 
世界銀行のレポート2021年11月
 
子どもの学力が低下した理由は、学校閉鎖による遠隔教育です。
 
この記事では、貧富の差によって生じる子どもの学習格差と、フィリピンにおける遠隔教育の問題点について解説します。

 

学習貧困率

新型コロナウイルスが流行した2020年以前、世界の学習貧困は2015年の時点で53%でした。
 
そして、2030年までに27%に減少すると推定されていました。
 
でもこれは、日本など先進国を含めた世界の平均的な数字で、発展途上国のフィリピンの場合、学習貧困は2019年の時点ですでに69.5%でした。
 
 
それが、パンデミックによって、10歳までの子どもの約9割が、簡単なテキストを読んで理解することができない状況に陥ったのです。
 
また、2020-2021の幼稚園、小学校への入学者は、前年より5%減少しました。
 

コロナ禍の学習方法

フィリピンは、2020年3月に学校が閉鎖され、同年9月から遠隔学習が行われています。
 
2021年12月現在も、学校が閉鎖されている国は、世界でフィリピンとベネズエラだけです。
 
 
自宅学習には、タブレットを利用したオンライン学習と、親が学校へ学習用のプリントを取りに行くモジュール学習の二種類あり、どちらを選択するかは親が決めます。
 
高等教育、または大学レベルの教育を受けた親の子どもの、オンライン学習率は40%ですが、義務教育を受けていない親の家庭では、オンライン学習への参加率が9%にとどまっています。
 
つまり、貧困家庭の子どもの約9割が、モジュール学習を選択しています。
 

学習ギャップ

先生がいない自宅での勉強は、幼稚園児や小学生にとって、ガジェットの使い方から、学習のアドバイスまで、親のサポートが不可欠です。
 
裕福な家庭なら、親や家庭教師が付いて、子どもの学習をサポートできますが、貧困家庭の親は、毎日、外で働いているため、子どもの面倒を見ることができません。
 
もし、仕事をやめて子どもに付きっ切りになれば、1日約1,000円の収入を失うことになります。
 
 
孤立した子どもは、オンライン学習のやり方が分からない。
質問したくても、答えてくれる人が誰もいない。
 
このような状況では、子どもの学習意欲は削がれてしまいます。
 
 
また、貧富の差による学習ギャップも問題です。
 
自宅でインターネットに接続できる環境があるのは、裕福層で70%。
中間層から貧困層では25%にとどまっています。
 
また、貧困層の子どもは、そもそも容量の大きなスマホやタブレットを持っていませんので、プリント学習しか選択できないんです。
 
 
紙ベースのモジュールでも、適切に使用すれば、オンライン学習と同じくらいの効果はあるのですが、先生からの指導や、家族からのサポートがない場合、学習効果は低下します。
 
プリント学習を選択している子どもの約半数は、カリキュラムの遅れを憂い、学習意欲が低下しました。
 

自宅学習の限界

フィリピン教育省では、すべての子どもが平等に教育を受けられるよう、スマホを持っていなかったり、インターネットに繋がらない貧困家庭の子ども向けに、テレビとラジオをつかった学習プログラムを配信しています。
 
また、一部の地域では役場から無償でタブレットの貸し出しが行われています。
 
 
しかし、これらの支援はハード面に限られ、子どもと向き合って学習をサポートできないという問題は、依然として抱えたままになっています。
 
また、貧困層に限れば、テレビがある家は10%、ラジオは8%に過ぎません。
 
 
2020年12月に行われた全国的な世帯調査によると、3人に2人の家が、子どもを学校に戻したいと答えました。
 
対面学習を行う意欲は、裕福な世帯よりもオンライン学習へのアクセスが少ない、貧しい世帯の間で最も顕著でした。
 
家での学習には限界があることを、親も子どもも感じているんです。
 
 
子どもはひとりでは勉強できません。
 
学習損失を抑えるためには、オンライン、電話、対面などで、生徒と教師とのコミュニケーション機会を増やすことが重要になります。
 
オンラインとプリントのハイブリット学習が行われている現在、教師はコロナ禍以前よりも多忙な日々を過ごしていますので、金銭や待遇面など、政府による教師のサポートも欠かせないでしょう。
 
 
2021年11月から、一部の小中学校では、テスト的に対面授業が行われています。
 
そして、問題がなければ2022年の前半にも、全国の学校で対面授業が再開されると目されています。
 
 
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