2021年12月16日、台風22号(フィリピン名:オデット)が、セブ島を直撃し、甚大な被害をもたらしました。
救助隊は被災現場の様子を「完全に大虐殺だ」と表現し、フィリピン赤十字社のリチャード・ゴードン会長は、「第2次世界大戦の時よりひどい爆撃を受けたような地域もある」と言うほどの破滅的なものでした。

僕はセブに住んで11年になります。
その間にも、台風や地震の自然災害はありましたが、今回の被害の規模は最大です。

この記事では、セブの被害状況と、求められる緊急支援について解説します。

台風22号の被害

クリスマスも間近な12月16日の夜8時ごろ、台風22号がセブ島に上陸しました。

台風が上陸する24時間前から、緊急アラートが頻繁に鳴っていましたが、いままでメトロセブ(セブ市、マンダウエ市、タリサイ市、ラプラプ市)を直撃した台風はなかったため、僕を含め、セブ市民は多少楽観的にとらえていたのかもしれません。

猛烈な勢力を保ったまま、セブ島に上陸した台風22号。

気象庁の発表によれば、中心気圧 915hPa
最大瞬間風速 75m/s

2019年9月9日に千葉市付近に上陸し、関東各地で記録的な被害をもたらした台風15号の最大瞬間風速は57.5m/s
これが気象庁での観測史上1位の規模ですので、今回の台風22号がどれほどの大きさだったかがわかると思います。

セブの人たちの話では、これほどのスーパー台風がセブ島に上陸したのは30年ぶりだということです。

台風がセブに近づいてきた日は、昼頃から風雨が強くなり、夜8時から10時のあいだは、家にいても恐怖を覚えるほどの強風でした。

僕の家も、壁が飛んで行ってしまい、雨水が流れ込み床上浸水。
必至になって手でおさえましたが、どうすることもできませんでした。

台風が通り過ぎた5日後の12月20日。
フィリピン社会福祉開発省(DSWD)の発表では、被災者120万人、避難所に避難している人44万人、そして台風による死者は約400人に達してしまいました。

ライフラインが完全に停止

台風が去った翌朝から、セブ島の全土と、隣接するミンダナオ島では、電気、水道、通信のライフラインがすべて不通になりました。
電気が使えるのは、ジェネレーターを持っている一部の裕福層に限られ、一般家庭では、昼も夜も暗闇の中での生活がはじまりました。

断水のため、トイレも使えません。
通信回線が遮断されたため、電話もWiFiも不通になり、誰とも連絡を取ることができません。

台風から11日後の12月27日現在、電力会社の発表では、電気が復旧した世帯は、フランチャイズエリアの21%にとどまり、また、フィリピン政府は、送電が止まっているすべての地域が復旧するのは、2022年2月になるだろうとの見解を示しています。

水道は、セブの中心部では、被災から5日後に、約半数の世帯が復旧しましたか、山間部や、ミンダナオ島では、10日後も断水状態がつづいています。
通信回線は、地域によって繋がるようになりましたが、不安定な状態です。

被災後の社会状況

台風の被害によって、街中のお店や施設はすべて閉鎖されました。
その理由は、建物の崩壊、停電、そしてスタッフが出勤できなくなったためです。

スーパーマーケット、コンビニ、飲食店が閉鎖されたため、市民は食べ物の確保ができなくなりました。
ガソリンスタンドも閉鎖されたため、自動車やバイクの給油もできません。

通信回線が不通になったため、電子マネーやクレカが使えなくなり、商品やサービスの売買は現金のみ。
人々はATMに殺到し、8時間待ちの列ができました。

ATMに並ぶ人の列

台風から10日後、スーパーマーケットと飲食店の約3割が営業を再開しましたが、商品が入荷していないため、スーパーでは品薄状態。
飲食店は、テイクアウトのみで営業を再開しましたが、30分~1時間待ち。

ATMには、30人ほどの列ができています。
ガソリンスタンドも約3割が営業を再開しましたが、1kmほどの列ができ、そのせいで道路は大渋滞になりました。

臨時に設置されたウォーターステーション

深刻な水不足

台風によって、被災者が困っているのは、飲み水と電源の確保です。
フィリピンでは、水道水を飲むことができませんので、水道水とは別に、飲料用の水を、ウォーターステーションやスーパーで購入しています。

しかし、台風によって飲用水を販売するお店は閉店。
スーパーからも、水は消えました。

我慢できなくなった人の中には、飲めない生活用水を口にして下痢を起こし、10名以上が死亡してしまいました。

電源ステーション

電源の確保も深刻な問題です。
家電製品を利用しているフィリピン人は、中間層以上に限られますが、スマホの充電切れは、すべての人たちにとって深刻な問題です。

フィリピン人は世界一、SNSの利用者が多い国。
家族や友人と、FBや携帯メールでやり取りをしているのですが、停電によってスマホの充電ができないため、誰とも連絡をとることができません。

電気コンセントがあるカフェや、電源ステーションに、人々は殺到しました。

緊急時に有効な支援

フィリピン政府と地方自治体では、出来る限りの被災者支援を行いました。

政府は、被災者に食糧と現金を給付することを発表しました。
役場では、被災者の避難所を確保しました。
通信会社は、無料で利用できる電源ステーションを設置。

そして、水道会社は、無償で飲み水の配給を行いました。

しかし、GDP(国民総生産)が、日本の7.4%しかない途上国のフィリピンは、政府に十分なお金がありません。
緊急時には、国や自治体だけではなく、民間企業や支援団体による緊急援助が不可欠です。

緊急援助とは、台風や地震などの自然災害が起きた時に行われる国際協力で、人道支援と呼ばれます。

台風災害の直後から、日本では、ユニセフやNPOなどのいくつもの団体が、今回の台風災害への募金活動を開始しました。
もちろん、それらは大きな支援となりますが、募金をしても、そのお金が、支援物資となってセブの被災地に届くのは、早くても一か月後。

被災者が求めているのは、一か月後に受け取る物資よりも、今日、生きていくための生活費です。
大量の水や食糧を調達し、被災者へ迅速に届けることは、緊急時にはできません。

緊急時にもっとも有効な支援方法は、現金の手渡しなんです。

グローリアセブでは、いままで、自然災害やパンデミックが発生した時は、米や食糧などの物資を届けてきましたが、今回は現金給付に切り替え、被災者にお金を手渡ししました。

そのお金で、お米や水を買う人がいるでしょう。
台風で壊れた家を修復する人もいるかもしれません。

使い方は人それぞれですが、緊急時に、お金を浪費してしまう人はいません。

NGOの役割

被災状況は刻々と変化し、日がたつにつれて被災者のニーズも異なってきます。
台風22号による被害では、最初は住む場所の確保、次に水と食糧、そして被災から3日が経過したころには、電源の確保が深刻な問題となりました。

これらの現地の情勢は日本のテレビでは報道されませんが、現地で活動しているボランティア団体なら、最新の状況を知ったうえで、迅速な行動が可能です。

今回の台風22号による被災では、グローリアセブも、日本の支援者から寄付金や物資をお送りいただき、被災者の元へ届けています。
現地で活動しているNGOのメリットは、行動の制約が少なく、すぐに動けるということです。

フィリピンでは、台風、火山の噴火、地震など、毎年のように自然災害が発生しています。
もしあなたが、途上国の人たちのために、なにか力になりたいと思ったら、現地で活動している日系のNGOやボランティア団体に直接、連絡を取ってみると良いと思います。

グローリアセブでは、「台風22号 義援金プロジェクト」のメンバーとして、被災地へ物資の配給を行っています。

 
 
気軽に質問や問い合わせができます!
 
子どもたちの写真や活動の様子を、セブ島から発信してます! (ロゴをクリック)