多くの日本人は、テレビやネットから得た情報で、自分のイメージをつくり、それが真実のように誤解をしてしまいます。
 
例えば貧困について、「世界には今日の食べ物にも困っている貧しい人たちがいっぱいいて、悪い状況がどんどん広がっている」
 
こんな先入観を持っている人はいませんか。
 
この記事では、世界の貧困状況について、人の先入観と現実がどれだけ離れているかを数字で説明していきます。
 
併せて、どうすれば事実を知ることができるかを、フィリピンで貧困層の支援活動を行っているボランティア団体、グローリアセブが解説します。

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フィリピンの貧困家族

貧しい人は10人にひとり

人は右と左、黒か白か、正しいか間違っているかなど、対極に分けて考えようとします。
極端な話の方が分かりやすく、印象に残るからです。

でも、実際は白でも黒でもない、その中間が多いのです。
貧しくて飢えている子供の写真を見れば、世界には貧しい子どもがたくさんいると考えてしまう。

でも実際は、裕福ではないけど飢えてもいない中間の人が多いんです。

途上国と呼ばれる国に住んでいる人は全世界の人口の10%

世界の貧困率と推移を見てください。

貧困率
1990年:36% 2015年:10%
貧困層の数
1990年:18億9500万人 2015年:7億3600万人

貧困は世界人口の10人にひとりですし、しかも15年間で61%も減っています。
(出典:世界銀行)

発展途上国の人は貧しいと言う思いこみ

もうひとつ、発展途上国の人は貧しいと言う先入観があります。
発展途上国とは、経済発展や開発の水準が先進国に比べて低く、経済成長の途上にある国をさした名称で、開発途上国とも呼ばれます。

具体的には、世界の経済について協議する国際機関、OECD(経済開発協力機構)が作成している「救済受取国・地域リスト」に載っている国と地域を指すのですが、その数は138。

国連に加盟している国が193なので、なんと世界の72%の国が発展途上国と呼ばれているんです。

中には世界第二位のGDP(国内総生産の金額)を有する中国や、11位のロシアも含まれています。

地域別発展途上国の数

アフリカ(サハラ砂漠より南側) 47
ラテンアメリカ・カリブ 25
東アジア・太平洋 24
ヨーロッパ・中央アジア 21
中東・北アフリカ 13
南アジア 8

では、途上国の中で、その国の国民の貧困率が60%を越えている国は

中央アフリカ共和国
コンゴ民主共和国
エリトリア
ギニアビサウ
マダガスカル
サントメ・プリンシペ
南スーダン
ジンバブエ
の8か国。
(世界銀行の調査データがある国のみ)

日本人には耳慣れない国の名前もありますが、すべてアフリカ諸国です。
つまり、途上国と呼ばれる国の94%は、貧困ではない、中間層または富裕層も多いことがわかります。

途上国のひとつ、フィリピンの場合も、国民の58%が貧困層と定義されていますが中間層も40%います。

出典 PIDS(フィリピンの非営利政府法人)
※PIDSの貧困の基準と世界銀行の基準は異なる

途上国の国民はみんな貧しい、と言うのが間違った先入観であることがわかります。

世界はどんどん良くなってきている

貧困の状況を知る上で、指数となるデータがあります。
それは乳幼児の死亡率の推移です。

貧しければ子どもを育てることができません。
親が十分な栄養を与えることができなかったり、不衛生な環境のため健康を害し、子どもは死に直面します。

5歳未満の子供の死亡人数(1,000人あたり/全世界平均)

1990年 93人(9.3%)
2016年 41人(4.1%)
出典:日本ユニセフ

乳幼児の死亡率は半減しています。

平均寿命も8年間で4歳のびています。
2010年 68才
2018年 72才
出典:WHO 世界保健統計

この中で、アフリカや中央アジアなど途上国が占める、平均寿命の短い下位の50か国を見てみると

2010年 53.98才
2018年 61.48才

途上国では、先進国以上に平均寿命が延びています。

客観的な事実の調べ方

日本人が間違った先入観を持ってしまう理由は、メディアの情報をそのままうのみにしてしまうからです。

テレビや新聞はドラマチックなことを強調して、ネガティブな情報をたくさん伝えます。
なぜなら、人は不安や恐怖をあおるニュースに興味を示すから。

たとえば、「今日もウィルスの感染者が止まらず100人になった」と言うのはニュースになりますが、「今日は100人しかいなかった」と言ってはニュースになりません。

「世界には貧困で苦しんでいる人たちがたくさんいる」と言うニュースは流れても、「貧困が改善されている」と言うニュースは報道されないのと同じです。

事実を知るには、公的な機関が発表している数字をみること、そして自分の目で確かめることが大切です。

ネット上には、国内外を問わずたくさんのデータが公開されています。
ちょっとググれば、自分の知りたい情報がタダで見れます。

海外のサイトだって、翻訳機能を使えばおおよそのことは理解できる。

世界の貧困について知識を深められるサイトをいくつかご紹介します。

・世界銀行
世界銀行とは、貧困削減や開発支援を目的とした融資と技術援助を行っている国際機関です。
1日1.90ドル未満で暮らす人々の割合を2030年までに3%以下にすることを目標に、世界120か国以上で活動しています。

世界銀行の無料オープンデータ
貧困について国別の詳細データが見れます。
英語ですので、ブラウザの翻訳機能をつかってください。

・ユニセフ
子どもの命と権利を守るために、保健、栄養、教育などの分野で活動を続けている機関です。
活動資金は、個人や企業、団体からの寄付でまかなわれています。

ユニセフ 世界子供白書2017
世界の子どもの教育水準や児童労働の実態などのデータを日本語で見れます。

・各国の政府機関が公開しているデータ
興味を持つ国があったら、直接その国の行政機関のサイトを調べてみるのもいいでしょう。
リアルタイムの詳しい情報を得ることができます。

たとえばフィリピンですと、統計局(Philippine Statics Authority)が、国内の貧困の現状と国民の暮らしについて、詳しいデータを公開しています。

フィリピン統計局
国民の生活全般を数字でわかりやすく説明しています。

またオンラインニュースでは、最新の情報を得ることができます。

GMA NEWS ONLINE

自分の肌で感じてみよう

数字で概要を確認したら、次は自分の目で見てみましょう。

その国の国民はどんな暮らしをしているのか。
どんな家に住み、なんの仕事をしているのか。

これらは数字だけではつかめません。

余談になりますが、日本では海外のニュースを報道するとき、日本人がわかりやすいように通貨を日本円に換算して報道します。

たとえば、日本は〇〇国に〇〇億円を援助したとか。
どこどこの国の国民所得は一日〇〇円だとか。

これは大きな誤解を招きます。

同じ100円でも日本の100円と海外の100円では価値が違います。
たとえば、あなたのバイト代が日給で100円上がってもそれほど嬉しくはないかもしれませんが、途上国では、その100円は暮らしを激変させるほどの価値があります。

海外に行って、その国の紙幣を使い実際にものを買ってみることで理解できます。

海外ツアーの経験がある人は多いと思いますが、観光客向けのホテルに宿泊し、現地の人が利用しないような高級レストランで食事をする旅行では、事実はわかりません。

宿泊先を自分で予約し、行動計画を決める個人旅行や、最近は女子大生にも人気のあるバックパッカーなどで、現地の人たちとふれあえる旅をすることで、事実が見えてきます。

ちょっと自信のない方は、現地のボランティア団体やNGOが募集しているボランティアプログラムに参加してみるのも良いでしょう。
その場合は、エージェントを通すのではなく、現地で実際に地域開発の活動をしている団体に参加する方が有意義です。

現地の実情や支援の苦労など、生の話を聞けます。

まとめ

電車の中で、お腹だけがポッコリ膨らんだ子供の写真と、「2,000円でこの子たちが一か月食べて行けます」、といったコピーがついたポスターを見たことありませんか。
ほとんどの日本人はこのような広告を見れば、あーかわいそう、すべての途上国の子供たちがこういった状況なんだ、と思ってしまうでしょう。

2,000円で一か月食べられるのは事実かもしれませんが、これは、見た人の印象を操作する一方的に偏った情報でもあります。

テレビや広告が発信する情報をうのみにするのではなく、客観的な数字と、自分の体験から得た情報を基に、事実を見極めてください。

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