セブのスラム

生活に便利な場所にスラムはできる

フィリピンでは2020年までに国内のスラム地域の撲滅を目指しています。

でもスラム撲滅は見た目だけの対策でフィリピンから貧困がなくなるわけではありません。

スラムを追われたスクワッター(不法居住者)の行く先とその後の生活を見ると、フィリピンからスラムと貧困がなくならない本当の理由がわかります。

観光客が集まるショッピングモールや語学学校の周辺、海沿いや川沿い、そしてゴミ山にスラムや貧困エリアが広がっています。

貧困層は生活に便利な場所、収入が見込める場所を探し、ベニヤ板やブロックで簡素な家を建て家族や親せきと身を寄せながら暮らしています。

電気は公共の電線から無断で引き込み、水はポンプで井戸水をくみ上げ、トイレは垂れ流しの状態。

スラムや貧困エリアは川や海などの水辺にできます。

ショッピングモールや語学学校など裕福層が集まる場所には、収入や食べ物を得る可能性があります。

物売りをはじめ荷物の運搬や車の駐車番。
運搬や駐車番は依頼されて行うのではなく勝手にやってチップを稼ぐ仕事です。

モールやレストランの近くならお客さんが食べ残したものをもらったり拾うことも。

金属やプラスティックなどの売れるものが捨てられるゴミ山にも貧困層が住みつきます。
貧困の人たちは収入の見込める場所にスラムをつくります。

水辺で生活する貧困層の悩み

フィリピンに限らず昔から裕福層は高台に、貧困は水辺で生活をする傾向。

その理由は水に関係します。

清い水は山から湧き出します。
高台で生活していればその水を独占できますし下流に流さないよう堰き止めることも可能。

裕福層が高台で生活する理由です。

貧困層が水辺で暮らす理由は生活用水を海や川に垂れ流せるため。
貧困の家にはトイレもないので水辺での生活が便利なんです。

東南アジア諸国の雨季は3か月から半年続き、雨季には土砂降りの雨が降り続きます。

下水溝が整備されていない途上国では降った雨が鉄砲水となり、翌日に平地を襲います。
雨水と一緒にゴミも運ばれます。

低地で生活する貧困層はこの雨水に悩まされ、鉄砲水の日は近隣の小学校や役場に避難する日が続く。
家の中は床上浸水しゴミと水が入り混じった汚水で毎日の生活に悩まされています。

スラムからの移住を命じられるとどうなる

スラムや路上に不法居住している貧困の人たちは、ある日、行政または地主から退去命令を受け、期限までにスラムを立ち去らなければなりません。

退去の猶予期限は約3か月。

その間に新しい居住地を見つけなければならないのですが、行政や地主から移住先の候補地を提示され、移住にかかる経費と新天地での生活費として、家族あたり約5万円が支給されます。

移住先の土地の賃貸料、建物を建てるお金、引っ越しにかかるお金、当面の生活費が必要なのでこの金額は決して高いものではありません。

移住先の候補地はほとんどが土地に余裕のある山岳地帯。

貧困地区やスラムの住民の多くはセブの山岳地域に強制移住をさせられそこで生活します。
環境は市街地のスラムよりも良いですが山岳地帯では収入は見込めません。

スクワッターが移住されられる場所をリロケーションサイドと呼びますが、山岳のリロケーションサイドでは食べ物も仕事もなく、収入のために結局街に出て行商や物売り、チップ目当ての仕事を続け不便なリロケーションサイドには戻らないようになります。

強制移住をさせられたスクワッターは路上で生活し、いつしか生活の便の良い場所に集まり、そこにまた貧困街やスラムを形成します。

これではいつになってもフィリピンから貧困とスラムはなくなりません。

フィリピンのスラム

貧困がある限りスラムはなくならない

家賃も光熱費も払えない貧困が住むスラム。

国が行っているスラム撲滅の事業は、単に不法居住者を移住をさせてその土地に住宅やビルを建て見た目をよくするもの。

住宅ができても食べるものにも困っている貧困層が毎月3万円以上もする家賃を払えるはずもなく、その事業は中流階級以上のためにしかなりません。

フィリピンから本当の意味で貧困とスラムをなくすには貧困に困っている人たちの生活を国や行政がしっかりサポートすることです。

それは誰もが受けられる教育機会の提供と、生活に必要な最低限の収入が得られる仕事の醸成。

途上国フィリピンでは、今日の食事代を稼ぐのを一番大切と考えている人たちが多いのです。

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