フィリピンでは、学校に通っていない子どもが、6才-14歳で3.5%、15才-24才では17.5%もいます。
そして、高校生の18.4%、小学生でも12.5%が、学校を卒業せずに途中でドロップアウトしてしまう現実。
(2015年 フィリピン統計局の調査による)

子どもはなぜ学校に通うのを止めてしまうのか。
フィリピンでストリートチルドレンの就学支援活動を行っている国際ボランティア団体、グローリアセブが解説します。

結論から先に言うと、その原因は3つに集約されます。
1.結婚、同棲、出産
2.家が貧困
3.学校に興味がない
 
目次

フィリピンの義務教育は13年間

小学校の通学風景
フィリピンの教育制度は、K to 12と呼ばれています。
kは幼稚園、12は小学校の6年間と高校6年間を合わせた年数です。

6才から18才までを義務教育としているのは世界でも稀で、アジアでは唯一です。

高校まで義務教育と定めることで、教育を重視しているフィリピン政府の姿勢がわかります。

しかし、高校卒業までを義務教育としないと、15才以上の就学者がいなくなると言う見方もできます。

不登校の理由は結婚と貧困


このグラフは、フィリピンの統計局、National Demographic and Health Surveyが、2014年に公表した、義務教育期間中に不登校になってしまった子どもの原因です。

なんと、原因の一位は結婚で22.9%。
女の子に限ると36.2%が、義務教育期間中に結婚したことが理由で不登校になっています。

続いて多い原因が貧困で22.7%。
そして、そもそも学校に興味がないと答えた子が19.1%

この3つの理由で、不登校になった子ども全体の64.7%を占めています。

・結婚
・貧困
・学校に興味がない

これらの理由を深掘りしていきます。

10代の子どもの10%が出産

母親と赤ちゃん
National Demographic and Health Survey(フィリピン統計局)の調査では、15〜19才の女性のうち10人にひとりが、すでに子どもがいるか、または妊娠中です。

さらに20〜24歳までの女性だと、2人にひとりと高くなります。

フィリピンでは若年で同棲、結婚、出産をする子どもが多く、15-19才では、既婚者が1.4%、同棲している子が7.1%、そしてすでに子どもがいる子が10%。

その理由で考えられるのは
・避妊しない
カトリックの国、フィリピンでは中絶は違法行為になります。
また、避妊をしないで性行為におよぶ人たちがたくさんいます。

・性教育を受けていない
学校には、性教育を教える授業がありません。

・周りが生んでいるから自分も生みたい
自分の周りに10代で子どもを授かっている母親がたくさんいる。
だから、自分も子どもが欲しいと思うようになる。

国民の16.6%が貧困

2018年現在、一人当たりの収入が、基本的な食料と非食料のニーズを満たすのに十分でないフィリピン人の割合は、16.6%と推定されました。
これは国民の1,760万人に相当します。

毎日の食べるものにも困っている家庭が、子どもの教育費を捻出するのは困難です。

もちろん、義務教育期間の公立学校では、授業料は無料ですが、制服や文房具など年間で15,000円程度がかかると言われています。
それ以外にも通学費や昼食代がかかります。

例えば一年間に3万円がかるとしたら、13年間では39万円。
途方もない金額です。

小学校には入学したものの、親が継続的に教育費を支払うことができず、途中で不登校になってしまいます。

就学に興味なし

不登校者の約5人にひとりは、学校に通うことに対して興味がない、つまり価値がないと答えました。
これは親の考え方を反映した回答です。

そもそも、貧困層の親は義務教育を完了していません。
最終学歴は良くて小卒、小学校中退者も少なくありません。

でも、自営の仕事を見つけて、収入を得、家族を養っている。

我が子を学校に通わせるための教育費を捻出するぐらいなら、仕事をさせて家計の助けをして欲しい。

義務教育を受けていなくても、稼げることを親は身をもって知っているから、子どもの教育に興味がないのです。

日本とフィリピン 不登校の理由の違い

文部科学省が発表した、児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査2018年によると、日本の不登校生徒の割合は

小学生 0.7%
中学生 3.6%
高校生 1.6%

不登校者の割合が最も高い中学生が、学校に行きたくない原因
(日本財団統計データ2018年/複数回答)

1.朝起きられない 59.5%
2.疲れる 58.2%
3.学校に行こうとすると体調が悪くなる 52.9%
4.授業がよくわからない・ついていけない 49.9%
5.学校は居心地が悪い 46.1%
6.友達とうまくいかない 46.1%
7.自分でもよくわからない 44.0%
8.学校に行く意味がわからない 42.9%
9.先生とうまくいかない/頼れない 38.0%
10.小学校の時と比べて良い成績が取れない 33.9%

怠け癖と思われてもしかたないような理由が上位を占めています。

フィリピンと日本の子どもの不登校の理由には、大きな違いがあるとこがわかります。

不登校の子どもを減らす方法

母親とのミーティング風景
不登校の子どもを減らし、義務教育を完了させるための方法はひとつではありません。

結婚や出産が理由で不登校になる子が多いフィリピンでは、義務教育期間中は恋人をつくってはいけない、と教えるNGOや教会もあります。
学校に通うために、金銭面のサポートをしているボランティア団体も。

不登校をなくす解決方法は、ひとつだけではありませんが、一番重要なことは、親の意識改革です。
子どもが教育を受ければ、将来は貧困生活から脱出できる。
この意識を親に理解してもらうことが、就学率を高める一番の方法だと思います。

グローリアセブでは、子どもたちの就学支援と併せて、母親とのミーティングを毎月行い、親の意識改革にも努めています。

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