ゴミ山で働く子ども
児童労働はなぜ起きているのか。

子どもの就労を削減するためにはなにをしたら良いのか。
フィリピンでストリートチルドレンの支援をしている国際協力団体 グローリアセブが、わかりやすく解説します。

結論から先に書くと、解決策は5つ

  • 児童労働の実態を正しく把握する
  • 違法な労働を厳しく取り締まる
  • 社会保障の利用者を増やす
  • 教育のみかえりをあたえる
  • 世界中の人たちの関心を高める

ほとんどが政府や国連機関レベルの対策になります。

でも、自分にできることを探している人も多いと思いますので、後半で個人でもできる行動も記載します。

この記事を読めば、児童労働の現状と、取り組むべき課題がわかります。
 

児童労働とは子どもに害を及ぼす労働

あなたは、下の3つの中で、どのケースが児童労働に該当すると思いますか?

1.農園で半ば強制的にコーヒー豆の収穫作業をさせられている子ども

2.ゴミ山で、親がやっているゴミ拾いの仕事を手伝っているスカベンジャーの子ども

3.親から言われ、毎日、路上でモノ売りをしているストリートチルドレン

子どもが働いているから、それがすべて児童労働と呼ばれるわけではありません。
たとえば家の仕事のお手伝いやアルバイトは児童労働には含まれない。

教育を受ける権利を妨げる
健康に有害な仕事
使役による労働(強制性)

これらに該当する仕事が児童労働に当てはまります。

1はたとえ就労環境が良くても、強制的に働かされているので児童労働

2は劣悪な環境で仕事をしているので、それが軽作業のお手伝いでも児童労働に該当する可能性アリ

3は就学ができているのなら児童労働には該当しません。

世界の児童労働の現状

国際労働機関ILO(International Labour Organization) によると、5~17歳の子どものおよそ1億5,200万人が児童労働をしています(2016年調査)

これは世界の子どもの10人に一人の割合です。

また、全体の半数は子どもが、健康や安全が脅かされるような有害労働に従事しています。

地域別 児童労働人口のグラフ

(地域別児童労働者数)

アフリカ 99,417千人
アジア太平洋 90,236千人
南北アメリカ 17,725千人
欧州・中央アジア 8,773千人
アラブ諸国 1,868千人

子どもの就労人口が多いのは、紛争や災害が多発している地域、貧困問題を抱えている地域です。

興味のある方は、ILOの報告書をご覧ください。
日本語版:児童労働の世界推計:推計結果と趨勢

児童労働の産業別の割合

子どもの労働分野で、一番多いのは農業で、全体の70%を占めています。

チョコレートの原料に使用されているアフリカのカカオ農園や、洋服の原料になるインドのコットン畑で農作業に従事する子どもたちです。

カカオ農家の多くは小規模な家族経営なため、IITA(国際熱帯農業研究所)の調査では、周辺地域や隣国から子どもを集め、働かせている実態が報告されています。

IITA (International Institute of Tropical Agriculture)のホームページ (英語)

世界のカカオ生産の約7割をコートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、カメルーンといった西アフリカの国々が占めています。

次に多いのが、路上でのモノ売りや、市場や港でのポーター(荷物運び)、ゴミ拾いや廃品リサイクルなどのサービス分野に従事する子どもで、全体の約17%。

フィリピンをはじめ、東南アジアの発展途上国では、この分野に属する子どもが目立ちます。
彼らは、家が貧しいために自分で仕事を見つけたり、親から指示された仕事を行っています。

つまり、親も子も同意のうえで働いているケースが多いのです。

フィリピンのストリートチルドレンやゴミ山の子どもがいくら稼いでいるかは、この記事を見てください
フィリピンの児童労働 これが子どもの仕事と収入

工場で、洋服の縫製や工芸製品の製造を行う、工業・製造業分野に従事している子どもは、全体の約13%です。

子どもが働かなければならない原因

原因は、雇用者の都合、途上国の社会、そして子どもの置かれている立場の3つに分けられます。

最初に挙げられる原因は、低賃金で働かせることができるからです。

体力的には大人に劣りますが、安い賃金で文句を言わず黙々と働いてくれる子どもは、雇用者にとって都合が良いのです。

途上国の田舎では、人口に見合うだけの働き口がなく、家族が食べていくためには、子どもが出稼ぎに出なければならないケースもあります。
また、途上国には子どもは仕事をして家計の助けをするのが当然と言う差別的な文化も残っています。

ひどいケースの場合は、親の借金のかたに子どもが拘束され、労働を強いられることも珍しくありません。

強制的な人身売買の場合は、親や本人の意思とは関係なく、犯罪人が子どもを誘拐したり、親をだまして子どもを親元から引きはがし、仲介人や引き取り先に売り渡してしまいます。

アフリカの子ども

子どもの違法労働を減らす5つの解決策

児童労働の原因が、紛争や貧困、宗教など地域によって異なっている以上、万能な対処法はありません。

しかし、状況や環境にかかわらず、違法な子どもの労働を減らすための対処策はあります。

1.児童労働の実態をつかむ

児童労働についての調査や規制を推進している国際労働機関ILOに加盟している国は、2019年現在 187か国。

世界の大多数の国が加盟していますが、実は加盟しているだけではあまり意味がないのです。

ILOには190の条約があり、加盟していても、条約ごとに批准(同意)するかどうかを加盟国が決められます。

たとえば、世界の児童労働で最も多い、「14歳未満の児童の農業における使用を禁止する条約」に批准している国は55か国にすぎません。
児童の就労人口が多いアフリカ、アジア諸国ではたったの8か国。

条約に批准した国は、児童労働を禁止する法律を定め、それを施行する責任を負っていますが、児童労働が当たり前のように行われている国では、児童労働の削減は国の優先課題ではないのです。
(日本はILO常任理事国で、この条例にも批准しています)

アフリカやアジアの途上国では、出生届が出ていなかったり、住民票に記載のない子どもも多く、そもそも児童労働の実態がつかめていません。

まずは、戸籍の登録や子どもの労働の実態調査など、現状の把握が必要です。

2.違法な労働を厳しく取り締まる

児童労働が日常化している途上国では、子どもが働いている姿を見ても無関心です。

政府も、子どもが健康を害するような仕事に従事していたり、そのために就学できないことは、良いとここは思っていませんが、半ば見過ごしているのが現実。

理由は、政治家が軋轢やトラブルを避けているため。

また、自分の在職期間中に目に見えた成果の出にくい児童労働の取り締まりはやりたがらない。

これでは延々に、児童労働が減少することはありません。

児童労働をなくすためには、その国の状況にあった法案を策定し、徹底した取り締まりが不可欠です。

フィリピンの例

2019年現在、フィリピンの大統領はドゥテルテです。

彼は、麻薬の撲滅と児童の保護に注力し、犯罪者に対してはその場での射殺も辞さない超法規的な政策を掲げ、国際社会に波紋を投げかけました。

たとえば、外国人を含め、親や親せき以外の人物が、子ども一緒に街を歩いているだけで逮捕されてしまう場合があります。

犯罪の温床となっているスラム街や、子どもに害を及ぼすゴミ山は、次から次へと閉鎖、または立ち入り禁止となっています。

未成年者の売春が行われているKTV(カラオケ店)の取り締まりも強化されています。

手法に強引さもありますが、犯罪は減少し、ドゥテルテ大統領への国民の支持率は79%。
民主主義国で、この支持率は異常なほどの高さです。

とはいえ、取り締まりを受けても、ほかの場所に移って、また密売や売春、児童労働をはじめるだろうと思う人もいるハズ。

たしかにそうですが、人は生きるために知恵を絞るようになります。
取り締まりが継続されれば、捕まらない合法的な仕事を探す。

ドゥテルテの強硬な取り締まりは、最初は国民も混乱し、クレームも多かったですが、今では、それが当たり前のように浸透しています。

大切なのは、政府が徹底してできるかどうかです。

フィリピンのスラム街

3.貧困でも生きていける、社会保障の利用者を増やす

途上国の場合、貧困家庭に生まれたら、貧困から脱出することは困難です。
理由は、ある決まった仕事しかできないから。

知識が狭い貧困層は、稼ぎを生み出す知恵を持っていません。

肉体労働に従事するか、親がやっていた仕事をそのまま引き継ぐだけ。

いくら働いても、同じことをしていれば収入は減る一方。

子どもが働きに出るしか、生きていく術はありません。

社会保障とは、どんな環境に生まれ育った人でも、基本的な人権が守れるよう国が定める制度。
就業や就学の支援、医療保障、年金や失業保険などが社会保障にあたります。

発展途上国にも、社会保障制度はありますが、実際にはあまり利用されていないのが現実。
理由は、そもそもこれらの制度を知らない。

フィリピンを例にとると、

無料で治療や薬がもらえるヘルスセンターがあります。
手続きをすれば、奨学金を受け取り無償で大学に通えます。
困窮家族には、役場からコメや現金が給付されます。

国民の5人にひとりが貧困層のフィリピンでも、手厚い社会保障制度がありますが、実際は利用者は多くはありません。

理由は、貧困層の多くは生活圏が狭く、入ってくる情報が少ないため、国の保障制度を知らないんです。

最低限の生活を保障する制度を利用せず、子どもを働かせることでなんとか食べて行っている人たちが多いのはもったいないこと。

社会保障制度の確立はもちろんですが、制度の利用者を増やす努力が、児童労働の削減、子どもの健康、健全な発育にも寄与します。

社会的弱者と呼ばれる人たちは、奥手で消極的な人が多いのです。

4.教育のみかえりをあたえる

なぜ教育を受けることが児童労働の削減につながるかと言うと、次の世代に貧困を連鎖をさせないためです。

子どもの時から労働をしていれば、自分の子にも労働を強いる可能性が高くなります。
教育を受けることで職に就け、自分の子どもに労働を課せなくても済む生活ができるようになる。

労働をしている児童の32%が学校に通っていません。

通っている子も、労働による弊害で、満足な授業が受けられていない。
睡眠不足による居眠り、宿題をする時間がない、お金がなくて文具を買えない、など。

また、途上国では教育の質も設備面も不十分なため、学校を卒業しても仕事で稼げるだけの能力や知識が身についていない。

時間とお金を費やして学校に通わせても、将来の収入が約束されていなければ、貧困層の親は、子どもを学校に通わせず労働を強要します。

子どもが仕事場ではなく学校に通うようになるためには、「教育は将来への投資」と、親に認識してもらえる成果を出さなければなりません。

日本など先進国では、教育を受けることは当たり前でも、途上国では、親も学校には通っていなかったひとがほとんど。
だから教育を受けるメリットが理解できない。

フィリピンの場合、小学校の授業は7科目です。

日本と大きな違いはありませんが、科目ごとの時間配分と授業内容を見ると、道徳や協調性、家族愛など、精神を養う教育に重きが置かれている印象です。

どれも大切ですが、貧困層から見ると、稼ぐことのできる実践的な教育もしてもらいたいと思います。

職業訓練校に通えば、稼ぐスキルは身につきますが授業料がかかり現実的ではありません。

無償の義務教育期間中に、働ける技術や能力を身につけることができれば、親は子を働かせず学校に行かせます。

英語力、技術力、コミュニケーション能力など、卒業後、すぐに仕事に就けるスキルを義務教育期間中に得ることができれば、就学率は高まり、比例して子どもの就業率は減るはずです。

5.児童労働に対する関心を高める

2000年ごろから、各国の政府やILO、労働組合、NGO、消費者団体などが、児童労働を予防するプロジェクトを立ち上げ、問題の解決に取り組んでいます。

そのきっかけとなったのは、欧州のテレビでアフリカでの子どもの就労状況が報道されたことと、NGOなどの人権団体による広報活動です。

日本でもNHKの番組、クローズアップ現代が、「安さの裏で過酷な労働 問われるグローバル企業」と言うタイトルで、過酷な労働を黙認するグローバル企業の責任を追及し、話題を集めました。

世論の声に後押しされるように、政府や国際機関が動き、その結果、2016年の子どもの労働者数は2000年と比較して40%減少しました。(ILO報告)

児童労働は良くないこと、と総論ではわかっていても、それぞれの国には事情や思惑があり、対処策が後回しになっています。

先ほど紹介したように、「14歳未満の児童の農業における使用を禁止する条約」を批准しているアフリカ、アジアの国はたったの8か国です。

ならば、世界的な世論で撲滅の風潮をつくり、国や企業を動かすしかありません。

それには、NGOの活動やマスコミの力も必要ですが、私たちひとりひとりが児童労働に関心を寄せることが大切です。

インドの子ども

わたしたちにできること

児童労働の問題解決は、国家や国連組織、そして市民社会にたよることが多いのが現実。
でも、個人ででできることもあります。

現状を広める啓発活動

児童労働はすぐに解決する問題ではありません。
でも、前進させるためには、世界の児童労働問題、多くの人たちが問題意識を持つことが大切。

日本は児童労働への関心が欧米と比較してかなり低いです。

現状を正しく学び、それを広める活動です。

NGOのホームページをくまなく見たり、活動報告会などに参加してみる。

日本だけではなく、国連の機関や海外のNGOのホームページには、日本の団体が発信している情報よりも、詳しい情報が掲載されています。

英語ですが、翻訳アプリを使えば、だいたいのことは理解できます。

国際労働機関(ILO)

世界的に評価が高いNGO
CWC (THE CONCERNED FOR Working Children)

自分が知り得た情報をSNSで拡散したり、大学生ならサークルを立ち上げで研究するのも良いでしょう。

フェアトレード商品の普及

立場の弱い途上国の生産者が、人間らしく暮らしていくために、正当な賃金が支払われている商品を、フェアトレード商品といいます。

石鹸、洋服、コーヒー、ローソクなど

フェアトレードの基準の中には「児童労働の禁止」も盛り込まれていますので、商品を購入することで児童労働の削減に、なんらかの寄与をすることになります。

個人で購入してもいいですし、学生なら啓発活動をかねて文化祭などで販売することも。

ただし、「これはフェアトレード商品です」と書いてあればなんでも良いというわけでもありません。

国際基準を満たしているフェアトレード商品には国際認証ラベルが、団体にはホームページなどの広報物に認定のマークが掲載されています。

Fairtrade International
国際フェアトレード認証ラベル(Fairtrade International)

フェアトレードとして認証された製品につけられるラベル

国際フェアトレード認証機関
Fairtrade International

THE CONCERNED FOR Working Children
フェアトレード団体(FTO)マーク

フェアトレード団体として認められているマーク

WFTO (World Fair Trade Organization)

これらのマークがあれば、国際的に認められている商品、または団体です。

その他、マークがついていなくても、企業や団体の独自の取り決めによってフェアトレードを厳守している商品もありますので、購入前するに、ホームページなどで調べてみてください。

商品を購入するときは、「誰が、どこで、どうやって作った商品なのか」をいつも気にしてみるといいでしょう。

まとめ

児童労働の削減は、すぐに成果がでるものではありません。

でも、みんなが取り組むことで、確実に世界から子どもの就労人口は減っていくはずです。

児童労働に関心のある人は、まずは、現状を学び、自分なりの解決策を考えて、そして実行してみてください。

解決策に正解も間違えもありません。
大事なのは行動することです。

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