ゴミ山で暮らしている子どもは貧しくて、学校にも通えずに毎日ゴミ拾いの仕事をしている、と考えている日本人は多いと思います。
でも実際は、ゴミ山の子どもでも、学校に通って勉強をしている子もいますし、朝から晩までゴミ拾いをしているわけではありません。
この記事では、フィリピンのゴミ山の子どもの仕事と生活について、セブ島のゴミ山の子どもたちを支援しているグローリアセブが解説します。
目次
1.ゴミ山の子どもの暮らし
2.ゴミ山の子どもの仕事
3.ゴミ山の子どもの食生活
4.ゴミ山の子どもの就学状況
5.ゴミ山の子どもが笑顔な理由
1.ゴミ山の子どもの暮らし
ゴミ山で暮らしている子どもの親は、ほぼ全員がスカベンジャーです。
スカベンジャーとは、ゴミを拾い集めて生活をしている人のこと。
彼らは、ゴミ集積所の敷地内や、その近隣に簡素な家を建て、そこで暮らしています。
スカベンジャーの両親の間に生まれた子どもは、7才くらいから親の仕事を手伝うようになり、10才くらいになると一人でゴミ拾いの仕事をして家計を助けます。
ゴミを積んだトラックは、30分置きくらいにゴミ山にやってきますので、平日の午前10時頃から午後4時頃まで、子どもは結構忙しく働いています。
土曜日と日曜日は、ほとんどゴミは運ばれてきませんので、比較的リラックスした時間を過ごしています。
空き時間や週末は、友だちと遊んだり、工作をしたり、お昼寝をするなど、普通の子どもと同じです。
小さい子どもは、ゴミの中からおもちゃを探し出したり、友だちとゴミ山を駆け回っています。
小学校高学年くらいの年齢になると、無料でWiFiがつかえる場所まで出かけていき、Youtubeにアップされている歌やダンスの動画をスマホにダウンロードして、家に帰ってから動画を観て楽しんでいる子もいます。
女の子に人気のある動画はK-POP。
日本から来たボランティアさんがゴミ山に行くと、韓流グループのダンスを踊って見せてくれます。
グローリアセブが支援しているゴミ山は、電波の届かない場所にあるため、インターネットはつかえません。
電気も通っていませんので、子どもたちはテレビを観ることもできません。
2.ゴミ山の子どもの仕事
ゴミ山の子どもの仕事は、ゴミの回収、分別、そして袋詰めの作業です。
ゴミ山のスカベンジャーは、週一回やって来るゴミの買い取り業者に、ゴミを買ってもらうことで収入を得ています。
そのためには、回収業者が高値で買ってくれるゴミを、たんさん集める必要があります。
男の子は、ゴミを積んだトラックがやってくると、「これは俺のゴミだ」と言わんばかりにトラックの荷台に飛び乗り、ゴミが捨てられる場所まで行きます。
ゴミ山は広大ですので、トラックがどこにゴミをおろすかを確認する必要があるんです。
ゴミがおろされると、金属やプラスチック、アルミ缶など、高額で売れるゴミをいち早く拾い集め、ゴミの種類ごとに分別し、袋詰めをしていきます。
買い取り業者は、ゴミの種類によって値段を決めているので、分別も大切な仕事。
男の子だけでなく、女の子もゴミを入れるサックを抱えて、ゴミ拾いや袋詰めの仕事を行っています。
3.ゴミ山の子どもの食生活
ゴミ山に住んでいる子どもたちも、食事は一日2~3回摂っています。
でも、ごはんと、おかずは小さな干し魚のみ、または1本のウインナーなど、とても質素な食事です。
ゴミ山には商店がありません。
週に一回やってくる移動販売で食糧品を購入しているのですが、家に冷蔵庫はありませんので肉や魚などの生ものは買えず、食事は日持ちのする干物や乾麺、缶詰などが中心。
栄養価が低く、量も少ないので、お腹を空かせて我慢できなくなった子どもは、ゴミの中から傷んだ食品やお菓子を拾って食べてしまいます。
ゴミ山の子どもに多い病気は食中毒なんです。
グローリアセブでは週一回、ゴミ山の子どもたちに、温かな食事を届ける活動を行っています。
4.ゴミ山の子どもの就学状況
ゴミ山の子どもの就学状況を説明する前に、フィリピンの学校制度について解説しておきます。
4才~5才 デイケアセンター
6才 幼稚園
7才~12才 小学校
13才~18才 高校
デイケアセンターというのは、無償の幼児教育施設で、義務教育には含まれていません。
フィリピン国家経済開発庁(NEDA)の調査によると、対象年齢の77パーセントの子どもが、デイケアセンターに通っています。
フィリピンの義務教育は、幼稚園から高校までの13年間。
就学率についての公式なデータはありませんが、小学校によっては1~3割の生徒が、入学後、家庭の事情や、貧困で制服や文具が買えないためにドロップアウトしています。
ゴミ山で仕事をしている子どもも、デイケアセンターへ通っている子は多く、グローリアセブの聞き取り調査では、約7割の子が、デイケアセンターに通っています。
しかし、義務教育の幼稚園になると、就学率は低下します。
その理由は、幼稚園に入園すると、制服代や文房具代などのお金がかかるため。
また、小学校への入学は、幼稚園を卒園していることが条件となりますので、さらに就学率が下がります。
でも、ゴミ山の子ども全員が、勉強をしていないわけではなく、自治体をはじめ、教会やNGOからサポートを受けている子どもは小学校に通い、中には大学を卒業する子もいます。
5.ゴミ山の子どもが笑顔な理由
日本人から見れば、ゴミ山の子どもたちは過酷な生活を強いられています。
でも、子どもたちは生まれてきた環境に嘆くことなく、毎日、明るく笑顔で暮らしています。
その理由は、ゴミ山での暮らしが当たり前だから。
お金持ちの家に生まれた子どもが、急にゴミ山での生活を強いられたら、嘆き悲しむでしょう。
でも、ゴミ山に生まれ育った子どもは、その生活が毎日の当たり前なんです。
そして、フィリピンには、親のために子どもが仕事をすることは当然、という文化があります。
ゴミ山も、スカベンジャーもいない、日本で生まれた人には、きっと理解できないと思います。
フィリピンの貧困と、子どもたちの暮らしに興味のある方は、グローリアセブのボランティアに参加して、セブ島のゴミ山の子どもたちと交流してください。
あなたの知らなかった世界を、きっと見ることできます。
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