ノンフォーマル教育

ノンフォーマル教育とは、なんらかの事情で学校に通うことができない子どもたちを救済する代替学習のことで、フォーマル、インフォーマルと並ぶ教育様式のひとつです。
 
途上国ではこの代替学習を利用して、たくさんの貧困の子どもが勉強をしています。
 
この記事ではノンフォーマル教育の定義や、フィリピンにおける具体例について、国際協力団体グローリアセブが説明します。
 
目次
1.ノンフォーマル教育の定義
2.フィリピンのノンフォーマル教育
3.ノンフォーマル教育の必要性
4.ノンフォーマル学習の具体例
5.SDGsとノンフォーマル教育

ノンフォーマル教育の定義

ノンフォーマル教育とは、ある目的をもって組織されるフォーマルな学校教育以外の教育活動のことを指し、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)では「誰もが受けることができる、柔軟で多様性のある教育システム」と定義されています。

ノンフォーマル教育の大きな特徴は、個人の生涯学習の過程におけるフォーマル教育への追加、代替、または補完であるということです。

教育は基本的人権であり、本来はすべての子どもたちがフォーマルな学校教育で必要十分な知識を得ることができれば良いのですが、学校教育は規制や画一性が多く、さまざまな事情を持った子どもたち全員のニーズを充たすことができません。

そこで、ひとりひとりの状況やニーズに合わせた柔軟な授業を行うノンフォーマル教育の必要性が出てきます。

ノンフォーマル教育は多くの場合、学校に通っていない子供たちの教育に貢献するプログラムが中心ですが、成人および青少年の生活スキルや仕事のスキルの向上、社会的または文化的発展に関するプログラムもあります。

また、インフォーマル教育との違いは、インフォーマル教育が日常の経験などに基づく、組織的ではない生涯にわたる学習プロセスであり、かつ、その多くが意図的なプログラムでないのに対して、ノンフォーマル教育には目的と計画性があり、フォーマル教育を補完するシステムであるという点です。

フィリピンのノンフォーマル教育

ノンフォーマル教育はAdvanced Learning Schools(ALS)と呼ばれ、フィリピンの教育省(DepED)が運営を管轄し、フォーマルな学校教育の代替授業として行われています。

プログラムは小学校レベルと高校レベルのふたつに別れていて、以前は職業訓練校としての性格が強く、生計訓練や技能訓練といった学習が多かったのですが、現在では、数学、国語、英語など、フォーマルの学校と同じ科目の授業が行われています。

但し、学校の教室で行う授業が前提のフォーマル教育とは異なり、生徒の利便性を高めるために、図書館や役場での対面での授業から、ラジオやインターネットを活用した自宅学習まで、柔軟な方式が取られています。

また、教えるのは教員免許を持った正式な先生ではなく、ソーシャルワーカーや役場の職員が担当しています。

生徒は小学校レベルの学習から始めて、高校レベルに進む必要がありますが、学生が正式な小学校の卒業生である場合は、高校レベルの学習から開始できます。

また、Advanced Learning Schoolsのカリキュラムを終了し、試験に合格すれば大学に進学することも可能です。

ノンフォーマル教育の必要性

ノンフォーマル教育で学習している生徒は、さまざまな理由で正式な教育機関から適切な教育を受けていない子供たちです。

具体的には、経済的な問題でドロップアウトした子どもや、病気や労働のため就学を続けることができなくなった子で、その根本原因の多くは貧困です。

フィリピン国民の2割は、一日1.75ドル(約400円)以下で暮らしている貧困層です。

公立学校の場合は授業料はかかりませんが、教材費や制服代、通学費など、学校に通って勉強をするために不可欠な費用が発生します。

それらのお金が捻出できない家庭の子は、一度は小学校に入学したものの、卒業前に中退してしまうケースがとても多いのです。

中退しても、ルール上は復学することが可能ですが、貧困層が急に裕福になるわけもなく、また、学校への拒否反応が子どもに生まれてしまい、復学するケースは本当に稀です。

そんな子どもたちを救済し、セカンドチャンスを提供するノンフォーマル教育の必要性は年々高まっています。

ノンフォーマルの教育を受けるためには事前面接があり、家庭の経済状況や本人のプロフィールなどを確認され、その上で合否が決定します。

面接官から、フォーマルな学校で勉強できると判断されれば、ノンフォーマルの教育は受けられません。

ノンフォーマル学習の具体例

ノンフォーマル教育は、国際NGOが政府に代わって行っている場合が多く、フィリピンの場合も、教会や国際協力団体、また、学生ボランティアなどがさまざまなかたちで、子どもの教育支援に力を入れています。

フィリピン セブ島の子どもたちを支援しているボランティア団体 グローリアセブでは、現在25名の子どもたちを預かり、奨学金の給付や、青空教室というノンフォーマル学習の場を提供しています。

その中で、公立中学に通っていたひとりの女の子が学校を退学し、今年から、行政が管轄するノンフォーマル教育で勉強をはじめました。

フィリピンのノンフォーマル教育で学習している子どものひとつの例として、具体的に説明します。
5人兄弟の末っ子で、家族とともにセブのスラム街に住んでいます。

公立中学に入学するまでは毎日学校へ行き、勉強をしていたのですが、中学に入学したとたんに非行に走ってしまい、学校には行かなくなってしまいました。

父親は昼間から酒浸りで仕事もせず、その上、ときどき彼女に暴力をふるっていました。
家族の生活費は母親の稼ぎが頼りなのですが、仕事は住み込みのお手伝いさんのため、家に戻って来るのは日曜日だけ。

そんな生活環境に嫌気がさし、夕方になると家を抜け出して遊びに行き、朝帰りの日々がつづきました。

母親はそんな我が子を心配し、仕事を辞め、父親を残して子どもたちと一緒に別の場所へ移り住みました。

それから1年が経過した頃、彼女の心の中に、もう一度勉強したいと言う気持ちが芽生えてきたんです。
でも、以前通っていた中学に戻れば、クラスメイトだった友だちと一学年遅れになることが恥ずかしく、復学を躊躇っていました。

そこで、いままで通っていた中学ではなく、行政が運営しているノンフォーマル授業への参加を決意。
役場の会議室で授業を受け、学期末には、就学証明書も発行されました。

もし、ノンフォーマル教育がなければ、彼女の最終学歴は小卒。
将来の就職にもおおきなマイナスとなるところでした。

SDGsとノンフォーマル教育

日本では貧困が原因で教育を受けられない子どもの数が少ないため、ノンフォーマル教育はあまり知られていませんが、海外、とくに途上国においてはフォーマルな教育を補完する学習の場として貴重な役割を果たしています。

しかも公的な教育機関として国から認められているので、教育課程を終了すれば、一般の公立高校の卒業と同等の扱いになります。

ユニセフの調査によると、開発途上国における15才以上の成人の識字率は63%。
つまり、4割近くの人が学校に通っていないため文字の読み書きが満足にできません。

貧困や紛争、病気、また、ちかくに学校がないなど、教育を受けていない理由はさまざまですが、どのような立場の人でも、やる気があれば平等に学習できるノンフォーマル教育は、SDGs(持続可能な開発目標)にも合致したシステムとして注目を集めています。

SDGsのターゲット4「質の高い教育をみんなに」では、2030年までに、すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する、と定められています。

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