フィリピンの新型コロナウイスル感染症の拡大は、貧困地区やスラム街に集中しています。
この記事では、感染症の拡大を防止する政府の対策と、感染に怯える貧困層の現状について説明していきます。
今回の記事はYouTubeでもご覧になれます。
フィリピンのロックダウンは世界最長
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、フィリピンでは2020年3月からロックダウンの措置が行われています。
フィリピンは、アジアで最初にロックダウンを行った国です。
それでも、新型コロナウイルスの感染者が減少しないため、7月の現在も、ロックダウンは続いています。
ロックダウンとはコミュニティー隔離措置のことで、フィリピンの場合、規制は大きく3つに分類されています。
・完全隔離(ハードロックダウン)
新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増加している特定の地域を対象とした処置。
よほどの理由がない限り、完全に外出禁止。
食糧は自治体から支給されます。
・強化されたコミュニティ検疫(ECQ)
外出許可証を持っている人だけが、食糧など生活必需品の買い物の場合に外出が許可されます。
但し、外出は住んでいる地域に限られる。
夜間や日曜日の外出は禁止。
企業やお店も、国民の生活に直結する商品やサービスを提供するビジネス以外は営業が停止されます。
・一般的なコミュニティ検疫(GCQ)
外出許可証を持っていれば、自分の居住地の地域外への外出も可能。
企業やお店も、従業員数や客席を制限した上で、再開が認められます。
これらは、新型コロナウイルスの感染状況に応じて、地域ごとに決められます。
7月6日現在
メトロマニラ GCQ
セブ市 ECQ(市内の一部の地域ではハードロックダウン)
現在の規制は7月15日までで、それ以降は新型コロナウイルスの感染状況に応じて、規制が継続されるか、または緩和されます。
写真:ロイター
セブの感染はスラム街から拡散
フィリピン国内で新型コロナウイルスの感染率(人口に占める感染者)がもっとも多いのがセブ市です。
当初は感染者は特定のスラム街に集中していました。
セブ市だとMambaling(マンバリン)とZapatera(ザパテラ)。
また、スラム街だけではなく刑務所内での感染も広がりました。
そのため、当初は感染者が多いセブのMambaling、Zapatera、そしてマニラのTondo地区で、ハードロックダウン(完全隔離)措置が行われ、ウイルスの封じ込めを図ったのですが、6月からは市内のいたろ場所で感染者が急増。
スラムに住む感染者が、規制を守らなかったためと予測されます。
この事態を重く見た政府は、6月下旬にマニラから大量の警官と軍をセブ市に派遣し、監視を強めています。
大通りには何か所もの検問所が設置され、武装した警官による検温や許可証の確認が行われ、違反者はその場で逮捕。
軍の装甲車も待機しています。
但し、フィリピンは民主主義国家ですので、実際に銃器を使用することはなく、あくまで威嚇の意味。
また、検問や監視は大通りに集中し、コロナ感染のリスクが高い、スラム街などは手薄になっていますので、スラムでは、規制を守らず日常の行動をとっている人が絶えません。
集団感染しやすいスラムの暮らし
スラムで、新型コロナウイルスが広がりやすい理由は3つあります。
・居住環境
スラムの住人は、空地だった場所に小屋を建てたり、テントを張って生活しています。
家は小さく、隣との幅は20センチほど。
そんな狭い居住環境に、10人ほどの家族が密集して暮らしています。
たとえば、トンドは世界で有数の人口密集地帯とされ、人口密度は、1平方キロメートルあたり、約6万5千人
これは、東京都の人口密度の7倍に相当します。
・生活様式
スラム街では、道路などの共用スペースで、炊事や洗濯が行われています。
周辺住人との共同生活に等しいので、衛生面を気遣うことはほぼ不可能です。
また、肉や魚の買い物は、露天のお店を利用します。
テーブルに並べられた生鮮品の前で、マスクをしない人たちがおしゃべりしながら、買い物をしていきます。
・貧困
毎日を200円~300円で暮らしている貧困層は、たとえ新型コロナウイスルが疑われるような症状が出たとしても、すぐには病院へ行けません。
検査や治療をうければ、高額な費用がかかるからです。
なので、感染の疑いがあっても、家で寝ているだけ。
その間に、家族や周辺の人たちに、ウイルスを拡散してしまう可能性があります。
不衛生で、人が密集したスラムは、感染症が発生しやすく、さらに誰かが発病すれば、すぐに集団感染してしまう危険が高い地域です。
感染者を増やす国民性
フィリピン人の国民性が、感染を広めている可能性もあります。
・明るいラテン系
フィリピン人は、スペインやイタリアと同様、おおらかで明るいラテン系の国民です。
大きな声でしゃべる
ハグや握手をする
細かなことは気にしない
せきやくしゃみによって被膜感染する新型コロナウイルスの場合、これらの習慣は、感染を広めてしまうリスクにつながります。
・ルールを守らない
フィリピン人は、いまが楽しければオッケーという国民性です。
規制やルールに縛られることなく、自分のしたいことをする自由人。
国が外出禁止などの規制を発布しても、その指示に従わず、大勢で集まってパーティーをしたり、ギャンプルに講じています。
新型コロナウイスルが貧しい人を苦しめる
フィリピン労働雇用省(DOLE)の発表によると、COVID-19の影響で、3,000の企業が一時閉鎖や廃業に追い込まれ、140万人の失業者が発生しました。
しかし、この数字は正規雇用されている人の人数で、個人事業や日雇い労働で生計をたてているスラム街の貧しい人たちは含まれていません。
貧困層の仕事は、物売りや肉体労働など、日雇いか自営業が中心です。
しかし、コロナによって政府からから外出禁止や、店舗の一時閉鎖の命令が出され、仕事はできません。
正規雇用者でしたら、一定の保障やお金が、国から支払われますが、自営業の彼らは収入が完全になくなります。
フィリピン統計局(PSA)によると、基本的な食料と生活必需品が十分ではない貧困層の数は、国民の16.6%に達しています。
フィリピンでは警察や軍による隔離措置の徹底により、コロナウイスルの封じ込めに努めています。
医療現場は、不眠不休で患者の対応にあたっています。
行政からは一定の生活保障のお金や物資も配給されています。
しかし、スラムの住人は、感染のリスクと飢えの恐怖にさらされながらの生活を余儀なくされています。
フィリピンで活動しているボランティア団体 グローリアセブでは、スラムやゴミ山に暮らす人たちへ生活物資を提供する支援活動を続けています。
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