世界で一番ストリートチルドレンの数が多いフィリピン。
路上で暮らしている子どもが25万人いると言われています。
ストリートチルドレンを救済するために必要な支援策を、フィリピンで子ども支援の活動を行うボランティア団体 グローリアセブが説明します。
結論から先に言うと、ストリートチルドレンの救済に必要な支援は3つです。
・食事と住まいの保障
・就学サポート
・職業訓練
ストリートチルドレンの3つのカテゴリー
救済する活動を説明する前に、ストリートチルドレンが置かれている立場と問題点を整理しておきます。
貧困の子どもは生活環境によって3つのカテゴリーに分類されます。
1 家がなく、家族からの支援もない子ども
2 定期的に家に帰るが、ほとんどの時間を路上で過ごす子ども
3 家族自体がホームレスで、家族とともに路上で生活している子ども
出展
UNICEF(国連児童基金/ユニセフ)
ひとつずつ解説します。
この中で最も過酷な環境に置かれ救済が必要なのは家も家庭もない子です。
家庭が貧しく親が育児放棄し、我が子を置き去りにしてどこかへ行ってしまった。
路上で出産しそのまま放置するケースも珍しくないです。
やがて同じ境遇の子どもが路上で集団生活をはじめます。
そこに悪い大人が目をつけスリやドラッグを教える。
善し悪しの判断が付かない子どもは、食べていくために路上でスリを重ね、盗品を大人が売りさばきお金に換えています。
犯罪に走ってしまうのは子どもが悪いのではなく、フィリピンの貧困社会の被害者なのですが、家も家族もない子どもの救済はリスクが伴うため、NGOや民間団体も手を差し伸べるのが困難な状況です。
次に、路上で暮らしているけど帰る家は存在する子ども。
フィリピンのストリートチルドレンはこのケースが一番多いです。
住む場所はあるのですが、山岳地域や離島など街中から離れた場所のため家には週に1日ぐらいしか戻らず、夜は路上やビルの軒先で寝ています。
帰らない理由は人の集まる場所で物乞いや商売をしているから。
ホームレスの生活を家族でしている場合はスラム街や空き地でテントか路上暮らし。
住む場所を転々と移動し自分たちが稼ぎやすい場所を探します。
ゴミ拾いで収入を得ているのならゴミが多く集まる場所へ。
物乞いなら人が集まる場所。
世界には1億~1億5千人のストリートチルドレンがいると言われていますが、実際正確な人数はつかめてません。
ストリートチルドレンを生むフィリピンの社会背景
ストリートチルドレンが増える理由はフィリピンの社会問題と直結してます。
2019年のフィリピンの社会問題
・急速な人口増 (直近の10年で増加率117%)
・労働人口に対して仕事が少ない (失業率 約6%)
・インフレによる物価高 (物価上昇率5.2%)
仕事のない地方では暮らしていけずマニラやセブの都市に出稼ぎに行く。
でも技能や資格を持たない貧困層に回る仕事は日雇いのポーターや大工など、定期収入は望めない職業ばかりです。
物価の高い都市で収入はわずか。
子どもの養育費は捻出できず育児放棄の状態に。
やがて子どもは家を出て路上で暮らし始めます。
また、倫理や道徳を知らない子どもは若年出産します。
自分の生活もおぼつかない毎日で、後先考えず何人も子どもを産んでしまう。
5年後はみんなストリートチルドレンです。
ホームレスの子どもが抱えるリスク
路上生活を強いられている貧困の子は5つのリスクと問題を抱えています。
健康喪失
生活用水やトイレの排水までもが垂れ流し状態のスラム街で生活していると、細菌やウイルスの感染率が高まります。
治療費が工面できれば結核、麻疹、マラリアなどにかかっても通院できますが、貧困の子は治療もできずそのまま亡くなってしまうケースも。
栄養不足
栄養を摂取するどころか食べるのもままならない生活。
骨や皮膚に異常が起きたり貧血で倒れる場合も。
フィリピンの子どもの死亡原因で一番多いのが食中毒。
空腹に耐えられず腐った食品を口にするから。
就学できない
学校に通うためには制服や文具などの費用が掛かります。
入学の手続きも必要。
教育費がなく、手続きをしてくれる親もいなければ勉強したくてもできません。
完全に路上生活をしているストリートチルドレンで、毎日学校に通学している子はほぼ皆無です。
児童虐待
保護者がいない幼い子どもは犯罪組織のターゲットになります。
身売りや臓器売買、女の子の場合は性的暴行の被害者になるケースも。
薬物中毒
7歳ぐらいでタバコやシンナーを常習している子は珍しくありません。
もう少し大人になるとシャブに手を染める子も。
犯罪や労働の対価として大人から与えられるのです。
空腹感を忘れさせ現実逃避できる違法薬物が手放せなくなりやがて中毒に。
路上で子どもが薬物を使用していても、それを止める大人はいません。
フィリピン政府の救済策
国家の組織としては社会福祉事務所(DSWD)がストリートチルドレンの救済に取り組んでいます。
・ストリートチルドレンの就学を支援する奨学金プログラム(Conditional Cash Transfer)
・補助的給食プログラム(Supplemental Feeding Program)
・収入向上プロジェクト
なとが遂行されています。
しかし、あまりに多いストリートチルドレンの数と限られた国家予算のため、成果は見えてません。
もうひとつ、政府が取り組みを強化している施策は大人の取り締まり。
子どもに危害を与えそうな行為に対しては取り締まりがきつくなっています。
例えば、子どもと街を歩いているだけで誘拐、人身売買とみなされ逮捕される場合も。
好意で食事をご馳走するために子ども一緒にいても、そこに親が同席していなければ条例違反となります。
民間団体にできる効果的な救済策
ストリートチルドレンの救済に必要な支援は食事と住まい、就学支援、そして職業訓練の3つ。
但し年齢に応じて求められる救済策が異なります。
・2歳~12歳:食事と住まいの援助
健康に育つための栄養補給と衛生的な環境の提供です。
NGOや教会、また企業が炊き出しを行い、路上の子どもたちにごはんを提供している場面を良く目にします。
ひとつの団体で毎日たくさんの子に食事を配給することは不可能ですが、いくつもの団体が週一回でも継続していけば大きな救済策となります。
また、社会福祉事務所に相談の上、路上で寝ている子どもを保護し、公的な施設や孤児院に預ける手伝いもできます。
興味のある方は市役所か社会福祉事務所に相談してください。
参考
セブ市役所のホームページ
・6歳~18歳:教育支援
フィリピンの義務教育期間は6歳から18歳ですが、孤児は学校に通う方法すら知りません。
学校に通うための準備や就学を継続するのに必要なモノとお金を援助します。
長期の支援なら返済不要の奨学金が一般的。
短期なら文房具の配給。
新しい文房具を手にした子どもは、それだけで就学への意欲が沸きます。
・18歳:職業訓練
自立した大人に成長するためには定期的な収入が不可欠です。
男の子なら自動車修理工や電気技師、大工など。
これらの専門職は免許を持っているかどうかで収入に数倍の差がつきます。
フィリピンにはTESDA (Technical Education and Skills Development Authority)と言う公的な職業訓練校が存在し、3か月ほど訓練を受ければ免許を取得でき仕事も斡旋してもらえます。
問題はその期間の生活費の確保。
職業訓練の期間中、肉や魚、お米などの食料品を援助します。
また、女性に対して手に職を付けてもらう取り組みも。
工芸品から石鹸などの日用品づくり。
縫物や食べ物の料理など。
技能を身に着けた女性は商売を始めたり内職で稼げます。
グローリアセブのストリートチルドレン救済活動
子どもの将来を考えれば一番大切なのは教育。
でも、食事や住居の確保が優先される貧困層にとって教育は一番の後回し。
グローリアセブは奨学金制度を立ち上げストリートチルドレンが義務教育の終了する高校卒業まで就学支援を続けています。
具体的には子どもが学校へ通うための学生服、靴、スクールバッグ、そして文房具の提供。
通学費と食費の補助として毎月奨学金を支給してます。
また、週末には屋外で補習授業を行い子どもが学校の授業についていけずドロップアウトしないよう教育のサポートもしています。
救済する子どもの基準は3つ
・家はあるがほとんどの時間を路上で暮らしている子
・親が育児放棄をしていない
・学校に通いたいと強く願っている
家も親もいない子を学校に通わすのは困難です。
就学させたとしてもドロップアウト率が非常に高い。
親または親族が一緒に暮らしている子がサポートの条件です。
新学期の始まる直前、5月に親子面談を行いこれらの項目をインタビューし、毎年数名のストリートチルドレンを支援する奨学生として登録します。
支援を希望する子どもは大勢いますが、グローリアセブのキャパシティも考慮し、新規で採用する子どもは毎年2~3名に留めています。
ボランティアに参加してストリートチルトレンと交流してみる
グローリアセブでは社会常識や道徳を教える青空教室、また、遠足やクリスマスパーティなど、過酷な生活を強いられている子どもに生きる楽しみや喜びの時間を提供するボランティアを行っています。
ボランティアにはどなたでも参加できますので、子どもたちと触れ合ってください。
ストリートチルドレンについて理解を深められるはずです。
気軽に質問や問い合わせができます!
子どもたちの写真や活動の様子を、セブ島から発信してます! (ロゴをクリック)