海外ではボランティアは特別な行為ではありません。
誰もが日常的に、自分のできる範囲の中で支援の活動を行っています。
日本人が考えるボランティアの定義と、海外での意味の違いについて、フィリピンで活動を行っているボランティア団体、グローリアセブが説明します。
ボランティアの意味は自発的な行動
ボランティアの語源はラテン語のVoluntas(自由意志)
1650年前後にイギリスで使われ始めた言葉です。
日本では1969年、広辞苑にボランティアという語が初めて掲載されました。
海外に遅れること300年、そして、まだ半世紀しかたっていません。
ですので、日本ではその意味がまだ良く理解されいません。
ボランティアに対して日本人が抱く代表的な疑問を紹介します。
・社会性のある活動だけがボランティアと呼ばれるのか
・団体に属していなければいけないのか。
・手当をもらってはボランティアにならないのか。
ボランティアは狭い意味では社会性や公共性のある活動を指しますが、広い意味では社会性や公共性は不要です。
1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災など、大災害のときに、ボランティアが注目を集めますが、近所の公園の掃除や廃品回収など、自分がやりたいことを自発的に行う活動も立派なボランティアです。
NPOやNGOなど、ボランティア団体には所属せず、個人や仲間同士で行う活動もボランティア。
団体に所属すると、なんらかの義務が生じたり、時間を拘束されます。
個人がやりたいことを楽しくやって、結果、人の役に立っていればボランティアです。
日本では、ボランティアは無償奉仕と理解されてきましたが、報酬を目的としないだけで、結果として報酬があってもボランティアです。
自治体が個人へ、交通費や少額の補助(現金のみならず食事や制服)を出すところもあります。
その場合、有償ボランティアと呼ばれることもありますが、アルバイトとは違います。
1.自発的な行動であること
2.報酬を目的としないこと
3.大きさを問わず、社会の役に立つ活動
この3つが揃えばボランティアです。
海外のボランティアの定義
日本では、まだボランティアが国民に根付いているとは言いがたいですが、ボランティア先進国の欧米では、ボランティアの定義と意味がはっきりと定められていて、国民の参加意識率も高くなっています。
欧米の主要4か国の、ボランティアに対する定義と、国民の参加状況を見ていきましょう。
ボランティア活動の内容が、日本人が考えているものと異なっていることがわかります。
データは、文部科学省の報告書、諸外国におけるボランティア活動に関する調査研究(平成19年3月)を参考にしています。
アメリカ
定義
個人が自発的に他者や社会のために行う活動。
基本的に無償だが、市場価格よりも低い報酬を受け取ったり、交通費などの実費を受け取ることはかまわない。
ボランティア精神に大きな価値が置かれているアメリカでは、活動プログラムの整備など国レベルで取り組みが行われています。
また、地域の社会福祉、教育、環境、治安についての課題に取り組む、コミュニティサービスへの参加を積極的に促しています。
16才以上のボランティア経験者数
27~29%
ボランティアの年間活動時間 52時間(中央値)
主な活動
・教えること、指導
・資金調達、販売
・食事の準備、配達、提供
イギリス
定義
無報酬(交通費と経費を除く)で時間を割く活動で、親しい人以外の誰か(個人または団体)に役立つこと、あるいは環境に役立つことを目的としている活動。
民間や任意団体での活動、私的なコミュニティ活動も含まれる。
ボランティアは、他人または環境に役立つ活動をグループ、クラブ、団体の一員として行う公的ボランティアと、個人的に援助をする私的ボランティアの二種類に分類されています。
月に一回以上ボランティアをしている人の割合
公的 29%
私的 37%
ボランティアの活動とミーティングに充てている平均時間 17分(月)
主な活動
公的
・活動やイベントの企画運営
・資金集め
・実践的な手伝い
私的
・助言
・移送、外出の付き添い
・ベビーシッティング、子どもの世話
ドイツ
ボランティア活動に対する基本的な考え方は補完性の原理、つまり、社会の諸問題への対処は、まず民間ボランティアが取り組み、民間で対処できない場合は政府機関が介入すると言う考え方です。
社会で起きている問題は、民間団体が中心となって行い、その活動に対して行政が補助金を出す仕組みになっています。
行政が定めているボランティアの定義の中で特徴的なことは、個人的な活動ではなく、団体やグループが行う活動をボランティアと呼んでいるところです。
自発的である
金銭を求めない
公衆の利益を志向する
公的な場所で行われる
協力して遂行する
と定められています。
ボランティア活動に参加したことがある国民 36%
フランス
ボランティアは、義務的ではなく無償で何かを行う個人または団体と、献身的で無報酬のサービスを提供するNPOなどの非営利組織に大別されています。
その違いは私的な活動か公的な活動かです。
ボランティア活動に参加したことがある国民 26%
主な活動
・イベントや展示会などの運営
・スポーツや文化活動の指導
・物品の収集、生産、販売
ボランティアは特別な行為ではない
日本ではボランティアを、困っている人を助けることと定義されがちですが、海外のボランティア事例を見ると意味合いが違うようです。
資金の調達や、文化活動、イベントの運営など、プロボノに近い活動がボランティアとして行われています。
(プロボノとは、自分が持っている技術や知識、経験を生かして社会貢献を行っている人たち)
福祉を中心とした社会的な活動は、ボランティアに委ねられているというのも特徴的。
そして、海外では国民のボランティアへの参加意識が高い。
文部科学省の調査では、ボランティアに定期的に参加している日本人の割合は9.2%
欧米では26~37%が参加しています。
自分の得意なことを活かして、誰かのために活動する。
これが世界的なボランティアの意味です。
ボランティアをしてみたい人は、ルールや規約に縛られず、自分のできること、やりたいことをやればいいのです。
途上国のボランティアは貧困の救済
ボランティア活動が行われているのは、先進国だけではありません。
発展途上国でも、ボランティアによる支援活動は重要な役割を担っています。
但し、先進国と違う点は、ボランティアの意味が貧困弱者の支援であること。
大学生や社会人、教会、そして子を持つ母親が、地域コミュニティのために日常的に活動してます。
フィリピンで行われているボランティア活動の例を紹介します。
被災者を支援する活動
災害ボランティア活動、火災や地震に見舞われた被災地での家屋の復旧や道路整備など
教育施設や社会福祉施設での活動
保育園や幼稚園など、子どもの教育施設の清掃や授業の準備など、施設の運営をサポートする活動
子ども支援活動
スラム街の子どもたちへ食事や衣料品、また医薬品を届ける活動
子育て支援
知識の乏しい母親へ、子どもの栄養や衛生面での知識を提供する活動
環境美化活動
道路の清掃やゴミ拾いなど地域の美化に貢献する活動
途上国では、必要なサービスが行き届いていません。
非営利団体や個人が、行政と共同しながら、無償で支援活動にあたっています。
ボランティアは誰もができる
日本人はボランティアと言うと、偽善的な行為と思われないか、自分にはハードルが高いのではないか、これをしたら相手がどう思うか、など行動する前に色々と考えてしまいがち。
海外ではボランティア活動は日常生活の一部。
ボランティアについて悩むより、まずは行動してみましょう。
たとえ個人で行う小さな活動でも、行動してみれば自分にとってのボランティアの意味がわかってくると思います。
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