スラムの脅威は火災と水害
貧困層の住むフィリピンのスラム地区は、計画的につくられた街ではありません。
空き地に建てられるだけの家を密集させ隣の家との距離は数十センチあれば良い方。
その中をやっと人が通行できるほどの狭い道がくねくねと廻っています。
スラム街の住人が一番恐れているのは火災。
料理は練炭や炭を使い家の入口付近で魚や肉を焼いたりご飯を炊いています。
強風や子どもの火遊びなど予期せぬことですぐに建物に引火。
ベニヤ板で建てられた家は燃え上がり隣の家にも広がってしまいます。
消火器など持っていません。
消防に連絡しても道幅が狭く消防車は入れない。
スラム街で出火した場合は、水をかけて消すか燃え尽きるのを待つだけ。
火元になった住人は恐怖のため逃げ出してしまうので火はすぐに燃え広がり周辺の家屋をも焼き尽くしてしまいます。
出火原因はタバコの不始末も多くポイ捨てされたタバコの火が可燃物に引火し火災を起こします。
密集地のスラムでは自分が注意していても隣接する家からの出火で火事に巻き込まれ、家と家財道具、そして人命までも失うリスクに365日、昼夜問わず付きまとわれています。
水害のリスク
貧困層が密集するスラム街は海辺や川沿いに集中しています。
その理由のひつとはゴミや生活用水を海や川に捨てられるから。
捨てられたゴミによって水の流れがなくなり、雨が降れば海や川の水面が上がってしまう。
床上浸水です。
特に6月~11月の雨期には度重なる集中豪雨で床から50cmほどが水浸しになることも珍しくありません。
家財道具は高い場所に避難させますが、浸水が激しいと家財道具はそのままにして住人は近くの小学校など避難所へ退避します。
戻ってきたときには家はゴミで埋め尽くされ、家財道具だけでなく家も流されている場合も。
それでもスラム街から引っ越しできない理由
火災と水害のリスクに怯えながら暮らす貧困層はなぜ住居を移さないのか。
住民に質問すれば、大多数がお金がない、と言う回答。
この土地を見つけ大工に家を建ててもらった。
新しい場所に引っ越しするには、また建築費用や賃貸費が掛る。
今は近隣住民と仲良くできているのに、新しい場所では地域に溶け込めるか不安。
子どもの学校が遠くなる。
そして、仕事がなくなる。
引っ越し代や学校問題は一時的なことですが、最も大切なのは仕事です。
彼らにはその場所に暮らしている理由があります。
港の近くならポーター。
ゴミ山ならゴミ拾い。
観光客が集まる場所の近くなら物売り。
生命にかかわるリスクがある劣悪な環境でも、毎日食べていくためにその場所で暮らしています。
スラム街の人々が求めている住環境
フィリピン政府は国から貧困をなくす目標を掲げ、スラム対策にも取り組んでいます。
貧困層の生活相談、健康や子育てのセミナー開催、食事配給など。
地域の役場が支援活動を行っています。
もちろんそれらは重要な支援です。
しかし貧困層は安心して暮らせる場所を求めています。
命を脅かされるような災害リスクが低く、自ら希望すればその場所にずっと住んでいられる権利。
貧困でも生命と生活の最低限の保障はされるべき。
彼らは自分で望んで貧困になったわけでもスラムに住んでいるのでもありません。
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