フィリピンのスラム
フィリピンで大きな社会問題となっているスラム街の存在。
首都マニラをはじめ、第二の都市セブにもスラムが点在しています。

フィリピンの政府は、マニラやセブなどの都市部にあるスラム街を買収して、新しく住居を建設し、低賃金で貧困層に提供するスラムクリアランス事業をすすめています。
しかし、スラムクリアランスは、強制移住に等しい政策のため、スラムの住人は苦悩しているのが現実。

国の強制排除政策と、スラムの不法居住者が抱える問題についてレポートします。

強制排除政策が新たなスラムを生む

スラムは麻薬や拳銃の密売、売春など犯罪の温床となる問題を抱えています。

また街の景観を損ねるためフィリピン政府はスラムの住人への強制排除政策と跡地の再開発を推し進めています。

しかし、住人を排除しコンドミニアムや商業施設を建設する政策は成功を納めているとは言えません。
住人が出て行ったあと、計画通り工事がはじまらない、または途中でストップしているスラム跡地がセブ市内にも数か所あります。

理由は行政の予算不足。
最初から予算的根拠が乏しい再開発計画なのです。

スラムクリアランスと呼ばれる強制排除政策は根本的な解決につながらず、新たなスラムを生み出す結果となっています。

スラムで生活する人たちの事情

仕事を求め地方からマニラやセブに押し寄せる貧困層。
住む場所も仕事さえ決まっていない。
ただ大都市に行けば仕事があると言う願望だけ。

フィリピンには労働希望者の需要を賄うだけの雇用の受け皿がなく、仕事から溢れてしまうのはまず貧困層。

スラム街から強制移住を命じられた住人には政府から山間部の土地が賃借で提供され、1万ペソ程度の引っ越し見舞金も払われます。

のどかで自然にあふれた移住先は、スラムとは比べ物にならないほどの良い住環境です。
しかしこの強制移住先には元スラム住人が生きていけない致命的な問題が。

山の中に暮らしていたのでは収入がなく、行商でも日雇いでも仕事をするためにはセブ市内へ出ていかなければなりません。

セブ市内まではバイクや車で30分は掛かります。
子どもが通う小学校までは徒歩で1時間も。

彼らはそれぞれの事情があってスラムに住んでいました。

ゴミ拾いを生業にしているスカベンジャーはゴミ山に。
魚の行商、市場や港でポーターをしていた人は港の近くに。

親の世代からその仕事で収入を得、生活して来たので他の仕事を知らず、移住先の山村では食べていけない。

だから、一度は田舎や山岳地帯に立ち退いてもすぐに都市部に戻り、以前とは別の場所に新たなスラムを形成してしまいます。

セブのスラム

貧困解決には就労支援

そもそもスラムの住人は劣悪な環境を好んで暮らしている訳ではありません。
仕事のため、お金のために仕方なく。

スラム住人でもスラムの治安と環境改善を求めているほど。

スラム住人の多くが仕事を探し、また小規模でも自営の商いを行っています。
しかし特殊技能や専門職の免許を持っていないので正規の雇用機会は得られない。
日雇い、日銭稼ぎの苦しい毎日が続きます。

スラム街をなくすためには貧困をなくす。
貧困をなくすためには雇用機会を提供する。

強制的に移住させ見た目だけその土地をきれいにすることに意味はありません。

スラム住人が継続的に仕事を得られるよう、男性には自動車整備、木工や金属加工、大工などの専門技術を身に付けてもらう職業訓練を。
女性にはアクセサリーや工芸品の製作など。

専門技術を持っている人と持ってない人では雇用される率も賃金も違います。

単なスラム街を取り壊し住人を移住させるのではなく、貧困層でも仕事に就ける環境を整えることが大切。

セブのボランティア団体 グローリアセブでは貧困家庭の女性の収入支援につながるモノづくりの場を提供しています。

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