世界保健機関(WHO)の調査報告では、フィリピンの子どもは、世界的に見ても不幸な環境に置かれています。
その最も大きな原因は、健康が確保されていないこと。
この記事では、フィリピンの子どもたちを支援している国際ボランティア団体 グローリアセブが、フィリピンの子どもたちの健康を妨げる原因について説明します。
東南アジアで最低
2020年2月、WHO(世界保健機関)が公表した、「A Future for the World’s Children?(世界の子どもたちの未来)」と言うタイトルのレポートで、フィリピンの子どもの未来の幸せは、180か国中の110位、東南アジア諸国連合のASEAN5の中では4位でした。
この評価は、子どもの健康、生活環境、未来への可能性についての指数です。
0.25=悪い
0.50=不十分
1.00=良い
WHOの報告書では、フィリピンは、子どもの発育が阻害されていて、未来への幸せ度が低い。
思春期までの子どもの健康へのアプローチを徹底的に見直す必要がある、と指摘しています。
子どもの健康を脅かす要因
フィリピンの子どもが不幸だと指摘される根拠は、子どもの健康を阻害する要因が多いことです。
その要因を3つ説明します。
・不健康な食生活
ある程度の年齢に達した子どもたちでも、健康に対する問題は付きまといます。
栄養を摂るという考えが親にも子にもなく、ジャンクフードや不衛生な食べ物が子どもの健康をむさぼります。
WHOの報告書では、途上国の子どもが、大量に加工食品や甘い飲み物を摂取するための健康障害を指摘しています。
フィリピンの場合も、ファストフード店でチキンやスパゲティを食べることは子どもたちの憧れです。
日常的に、コーラなどの炭酸飲料を飲んでいます。
食事は塩分が高く、味付けの濃い料理を好みます。
栄養価の高い食品を摂る、と言う考えはなく、甘辛でおいしいものを食べたい。
フィリピン人の死因で多い心疾患、血管疾患は、偏った食生活が原因です。
・不衛生な生活環境
貧困層の子どもは、スラム街や路上で生活しています。
ゴミの山と生活用水が流される水に囲まれたスラムは不衛生で、ばい菌のたくさんいる土壌と汚染水に覆われています。
そんな中、子どもは裸足で歩き、素手で食べ物を口に運ぶ。
抵抗力のない子どもはウイルスに侵され、発熱や腹痛を起こしますが、お金がなく病院には行けません。
フィリピンでは生後5年以内に亡くなってしまう子どもが6.2%もいます。
・若年での出産
貧困層ほど若年で出産します。
理由は
将来のことなど考えていない
自分の子どもを育てたい
避妊しない
WHOのレポートでは、思春期に妊娠した親は、思春期に子どものいない女性よりも、収入が1/6しかないと指摘しています。
親が10代なら、子育てをする知識もお金も十分にありません。
健康に対する知識もなければ、子どもに十分な食事をあたえることもできない。
フィリピンの子どもが不健康な環境で育っている理由のひとつは、若年出産の多さです。
健康の定義
WHOが定義している健康とは、身体的、社会的、精神的に健全な状態です。
たんに病気にかかっている人や、病弱な子が不健康と言うのではありません。
1986年に世界保健機関が発表した健康づくりについての憲章、オタワ憲章では、健康づくりには欠かせない8つの健康の前提条件が示されています。
1.平和
2.住居
3.教育
4.食糧
5.収入
6.安定した環境
7.持続可能な資源
8.社会的公正と公平
この8つの健康の定義の中で、フィリピンでは「住居」、「教育」、「食糧」、「収入」、そして「安定した環境」の5つの項目で劣っています。
裕福な家の子どもは健康です。
劣悪な環境の子どもは病気にかかりやすく、栄養不足のため寿命も短い。
国民の4人に1人が貧困と言われるフィリピンでは、貧困による子どもの健康阻害が、大きな社会問題になっています。
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