フィリピンでは、家庭が貧困のために小学校をドロップアウトする子どもが約3割います。
 
彼らは、勉強をしたくても学用品を揃えることができなかったり、親の仕事の手伝いで学校に行く時間が取れない貧しい家の子どもたちです。
 
この記事では、ストリートチルドレンの教育支援を行っている国際協力団体 グローリアセブが、フィリピンの子どもの就学状況と、貧困の子どもの就学を支援する奨学金について説明します。

 

フィリピンの就学状況


フィリピンの義務教育期間は幼稚園から始まる初等教育が7年、中等教育が6年の合わせて13年です。
 
フィリピンの就学率(2016年)

  • 幼稚園 66%
  • 小学校 96%
  • 高校 74%
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    就学率とは学齢人口(相当年齢の子どもの人数)における就学者の比率のことです。
     
    公的な機関が公表している就学率は学校に籍を置いているかどうかの有無で、実際に授業に出席している率ではありません。
     
    つまり、入学後、何らかの理由で登校しなくなってしまった生徒の数も就学者に含まれています。
     
     
    日本の場合は、不登校の生徒でも卒業させますので、就学率はほぼ100%になりますが、フィリピンの学校は授業日数の8割以上出席し、かつ一定の成績を収めていなければ小学生でも落第します。
     
     
    フィリピンの子どものドロップアウト率

  • 小学生 34%
  • 高校生 34.8%
  • 大学生 46.5%
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    ドロップアウトとは、学籍のある生徒が卒業をする前に学校を中退してしまうことです。
    小学生と高校生で3割以上、大学生で4割以上が卒業前にドロップアウトしています。
     

    出典元:フィリピン統計局 子どもの貧困指標に関する統計データベース

     

    貧困の子どもに多いドロップアウト

    小学校をドロップアウトする子どもの多くは、親の仕事を手伝わなければならなかったり、学費が支払えず就学を続けることが困難になった貧困の子どもです。
     
    学校に通っていない5歳から17歳の子どもの就労率は、男の子が50.5%、女の子は34.5%で、彼らは物売りなど、子どもでもできる仕事をして家計を助けています。
     
    ドロップアウトの大半は貧困が原因です。
     
     
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    フィリピンの奨学金制度


    貧しい家庭に育った子どもでも、奨学金で大学に通っている学生もいます。
     
    大学在籍者を対象としたフィリピン政府の公的奨学金は、試験に合格すれば学費の全額が給付されます。
     
    但し、優良大学で統計学または関連分野の学士号を取得していることなど、一定の条件があります。
     
    各大学でも、学生が属する世帯の支払能力の評価に基づいたレートで授業料の割引が行われています。
     
    しかし、フィリピンには小学生や高校生を対象とした公的な奨学金はありません。
     
     
    学費の安い国公立の高校に入学するためには、小学6年時に学区内の選抜試験を受け、上位の成績を獲得しなければなりません。
     
    貧しい家庭の子どもは学力の低い子が多いため、奨学金給付試験や選抜試験に合格する可能性はほぼありません。
     

    貧困の子どもが教育を受ける手段

    公的な奨学金制度や推薦制度以外にも、なんらかの支援を受けて学校に通う方法はあります。
     
    NGOや教会、民間団体などが募集しているスカラー(奨学生)となって学費を受給する方法です。
     
     
    社会貢献を目的としている非政府組織は、成績の高低にかかわらず、子どもの家庭環境や性格を重視して奨学生を決定しています。
     
    たとえ成績が悪くても、勉強する意思が強く、素行が良く、親が真面目に働いている。
    このような基準を設けているNGOや教会は少なくありません。
     

    グローリアセブの就学支援


    グローリアセブでは2023年現在、25名の奨学生を採用し、毎月奨学金を支払っています。
     
    奨学生の採用基準

  • 兄弟 姉妹が多い
  • 親または保護者が働いている
  • 教育を受けたいという強い意志がある
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    奨学生の多くは、路上で物売りをしているストリートチルドレンや、スラム街で暮らす貧困家庭の子どもです。
     
    学力は高くありませんが、勉強したいという気持ちが強く、母親も、わが子に教育を受けさせたいと考えています。
     
    フィリピンのスクールイヤーは8月から翌年の7月ですので、6月7月に奨学金受給希望者の親子面談を行い、毎年5名ほどの新規奨学生を採用しています。
     
    給付する奨学金は、里親会員の募集や寄付金、また、奨学金を受給している子どもたちと交流するボランティアプログラムを開催することで賄っています。
     

     
     
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