国連で開かれたサミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択されて以来、企業だけでなく大学などの教育機関においても、積極的にSDGsの課題解決に向けた取り組みが行われています。
そして、SDGsの目標達成に貢献するボランティア活動に関心を寄せる大学生も増えてきました。
この記事では、SDGsのために「自分もなにか行動を起こしたい!」と考えている大学生に向けて、SDGsを達成するために行われているボランティア活動の実例と、活動の始め方について、国際協力団体 グローリアセブが解説します。
1.大学生のSDGsへの意識
SDGsが採択されて以来、多くの大学でSDGsに特化した授業の実施や、SDGsに関する取り組みが行われています。
世界の大学の社会貢献度をSDGsの枠組みに沿ってランキング化した「THE 大学インパクトランキング2021」では、85校の日本の大学がエントリーし、そのうち39校が、17の開発目標別のランキングでトップ100位以内にランクイン。
世界的にみても日本の大学はSDGsに積極的に取り組んでいることがわかります。
教育機関でのSDGsへの取り組みが強化されていくにつれて、大学生はSDGsについて学び考える機会が増え、年々SDGsへの意識、関心が高まっています。
1-2.社会貢献活動に参加するSDGsネイティブ
定義や年代については諸説ありますが、SDGsに関する社会問題や環境問題に強い関心をもち、課題解決に向けて積極的に貢献したいと考える若者世代(Z世代、ミレニアル世代)のことを、SDGsネイティブと言います。
インターネットが当たり前の時代に生まれ育ち、日頃から社会問題や環境問題についての多くの情報に触れてきたため、他の世代に比べてSDGsに対する関心が強いと言われています。
SDGsネイティブは今後の社会問題を大きく変えていく世代として、企業からも関心が高まっています。
2.大学のSDGs活動取り組み例
SDGsへの取り組みは、政府や国際機関だけにとどまらず、大学をはじめとした教育機関においても、その役割を果たすことが期待されています。
中でも、これからの社会を担っていく若者を抱える大学では、教育の一環としてSDGsへのさまざまな取り組みが行われています。
ここでは、大学が取り組んでいる事例を文部科学省のデータをもとに紹介していきます。
2-1. 慶応義塾大学「キャンパスSDGsプロジェクト」
慶応義塾大学では、SDGsの達成のために、一人一人の身近な行動が必要と考え、学生にとって一番近い「キャンパス」に焦点をあて、キャンパスレベルからSDGsを達成することを目的としたプロジェクトが実施されました。
・SDGsステッカーの制作
2016年度には、SDGsの目標が記載されたステッカーを100種類、2500枚制作し、キャンパス内のあらゆる場所に貼り、学生のSDGs認知度をあげることを目的とした運動が行われました。
ステッカーにはSNSのアカウント情報も記載されており、学生が頻繁に利用するSNSも上手く活用されました。
このSDGsプロジェクトを実施した結果、学生のSDGsの認知度は実施前と比べ、2割から8割へと上昇。
今後は、SDGsへの認知度の向上だけでなく、課題解決へ向けた行動、成果に結びつけることが課題とされています。
2-2. 美作大学「食品ロス削減サークルの活動」
美作大学では、2014年に食品ロス削減サークルが設立されました。
SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」に関連するフードロス問題の解決に向けて活動を行うサークルです。
主な活動実績は、NPO法人と協働し、フードバンク活動の手伝いや、寄贈された食品を活用し、地域の子どもたちや住民とともに調理作業と会食を行いました。
この活動の結果、学生が食品ロス活動を行っていることに市民から関心が寄せられ、大学に直接食品寄贈の問い合わせがくるようになりました。
この活動の成果として、学生だけでなく、地域住民のフードロス(SDGs)に対する意識の向上が期待できることがわかりました。
この他にも、各大学ではさまざまなSDGsへの取り組みがされており、学生のSDGs活動の取り組みは、学校内だけでなく地域の方々のSDGsに対する意識の向上にも貢献しています。
参考:文部科学省 教育現場におけるSDGsの達成に資する取組 好事例集
3.大学生がボランティアに取り組むメリット
貴重な大学生活を有意義に過ごすためにも、SDGsへの取り組みに貢献したいと思っている方も多いと思います。
大学生がSDGsボランティアに取り組むメリットは大きく3つあります。
3-1. サークル仲間と活動できる
SDGsに対して意識の高い大学生は、「ペットボトルをやめて水筒を持参し、ゴミを増やさない」「日中はなるべく電気をオフにして節電する」など、日常的に個人で貢献できるSDGs活動への取り組みをしている方もいるでしょう。
しかし、ボランティア活動に参加することで、個人での取り組むことが難しいSDGs活動を経験できます。
大学によっては、SDGsに特化したサークルを発足する学校もあり、サークル活動の中で積極的にSDGsへの取り組みを行っています。
名古屋商科大学では、2021年にSDGsサークルが発足され、
・学園祭で環境に配慮した商品の出品
・学生食堂と連携して食品ロス削減を目指す
などの案が提案されました。
サークルの活動は、大学全体のSDGsへの取り組みを加速させるだけではなく、系列校などとの連携により、大学の枠を超えた活動と交流が可能です。
参考 : 名古屋商科大学 SDGsサークル
大学生活においてサークル活動は、大学生のうちにしかできない貴重な交流の場です。
サークルを通して、大学間の交流や企業との関わりで、さまざまな人との人脈を広げることができます。
サークル仲間と一緒にSDGsの問題解決に取り組めば、実践的なSDGs活動を楽しんで学ぶことができるでしょう。
仲間と一緒に取り組むことで、今まで一人では気づけなかった新たな発見や、みんなで協力しながら成し遂げる達成感を感じられます。
SDGsサークルや団体をうまく活用しましょう。
3-2. 専門知識を活かせる
大学で国際協力について学んでいる方や、語学を学んでいる方は、自分のもっている知識を利用して、SDGsボランティアに活かすことができます。
「ゼミで貧困問題について学んだので、実際に貧困問題を解決するために行動をしたい。」
「外国語学部で英語専攻なので、英語というスキル使ってボランティア活動をしたい。」
など、それぞれの専門分野を活かすには、海外でのSDGsボランティア活動がおすすめです。
専門分野に関連づけることで、学んだことを実践的に活かすことができ、より深くSDGsについて取り組むことができるでしょう。
3-3. 社会で必要な能力が身につく
SDGsへの取り組みは教育機関だけでなく、企業の間でも年々関心が高まっています。
企業が求める人材として、SDGsへの意欲関心をもった学生は重視されています。
しかし、
「SDGsについて関心があります。」
「SDGsについて大学で学んでおりました。」
などの知識や言葉だけでのアピールは、あまり効果的ではありません。
「実際にSDGsについてどのような取り組みをしたのか」という行動力がポイントです。
実際に、何かしらの行動を起こしたということが他の学生との差別化となり、明確な強みとなります。
また、SDGsボランティアの経験を通して、社会で必要な自主性、協調性なども身につけることができます。
SDGsボランティアで得た経験と知識は就職活動で強みとなり、社会に出てからもさまざまな場面で活かせることでしょう。
4.大学生が参加できるSDGsボランティア活動例
SDGsに貢献するボランティアとは具体的にどのようなものがあるのかを、目標ごとに国内・海外の事例で紹介します。
これらの活動には大学生でも参加できますので参考にしてください。
4-1.貧困問題を解決するための活動
SDGsの目標1「貧困をなくそう」を目標としたボランティア活動。
4-1-1.放課後児童クラブ
孤独感や疎外感を感じている共働き世帯や一人親世帯などの貧困家庭の子どもたちには心のケアが必要です。
政府が子どもたちの放課後の居場所をつくるために、行っている施策の一部に「放課後児童クラブ」があります。
この取り組みでは、共働き家庭等の小学校に就学している児童を対象に、放課後の適切な遊びや生活の場を提供し、子どもたちにとって安全で安心な居場所をつくることを目的としています。
地域の人々や学生ボランティアと一緒に積極的に連携して取り組んでいます。
参考 : 厚生労働省 放課後児童クラブ実践事例集
4-1-2.不用品の寄付
貧困による生活に困っている人のために、必要とされる物資を寄付することで手助けができます。
一般社団法人グリーンタイガーでは、家庭内で不要になった日用品やおもちゃ、衣類などを回収し、一人親などの貧困家庭や子ども食堂に物資支援しています。
参考:GREEN TIGER
4-1-3.海外ポランティア
東南アジアやアフリカの途上国へ出向き、貧困問題の現状や生活の実態を学びながら支援の活動を行います。
海外ボランティアには、現地の人と直接交流が図れるという大きなメリットがあります。
グローリアセブが募集しているフィリピンのボランティアプログラムでは、路上での寝泊まりやモノ売りをしながら暮らしている子どもたち(ストリートチルドレン)や、ゴミを生活の糧にし、ゴミ山で暮らしている人々(スカベンジャーズ)と交流できます。
実際に現地で生活しながら彼らの日常を体験することで、新たな視点から貧困問題について考えることができるでしょう。
4-2.飢餓問題を解決するための活動
SDGsの目標2「飢餓をゼロに」を目標としたボランティア活動。
4-2-1.フードバンク
フードバンクとは、まだ食べられるのに捨てられてしまうような食料を、捨てられる前にフードバンクに預けて、食料を必要としている施設、人々に届ける活動です。
農林水産省によると、日本の食品ロスの量は年間600万トンに及び、日本人一人あたりの食品ロスの量は年間約47kgで、この量は毎日茶碗1杯分のご飯を捨てているのと同じ量であるといわれています。
SDGsでは2030年までに世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させることを目標に設定されています。
フードバンク活動団体は、農林水産省のホームページから確認できます。
参考 : 農林水産省 フードバンク活動団体の一覧
4-2-2.国連WFP協会
食料問題に関する取り組みを行っているNPOやNGOの中には、ボランティアや学生インターンを募集している団体があります。
たとえば、飢餓のない世界を目指して活動しているNPO法人 国連WFP協会では、世界の飢餓問題について理解を深め、活動を応援したい意志のあるボランティアを募集しています。
飢餓問題のようにひとりでは解決することが難しい課題は、専門機関での活動に参加して、学びながら支援活動を行う方法が有効です。
参考 : 国連WFP協会 ボランティア協力
4-3.教育問題を解決するための活動
SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」を目標としたボランティア活動。
4-3-1.NPO法人キッズドア
教育に多額の費用がかかる日本では、家庭の事情や経済的な理由により、学校や塾に通うことができない子どもたちの教育格差が広がっています。
学習支援ボランティアは、そのような子どもたちのために勉強を教える活動です。
NPO法人キッズドアでは、ボランティアスタッフによる学習支援を行っており、頑張りたいと思う全ての子どもたちが平等にチャンスを掴み、希望をもてる社会の実現を目指しています。
参考 : NPO法人キッズドア
4-3-2.JICA国際協力機構
日本と同様に海外でも、さまざまな理由により十分な教育を受けることができていない子どもたちがたくさんいます。
特にアフリカやアジア地域では、自然災害や紛争、学校や教師の不足により子どもたちが教育を受けられる環境が整っておらず、教育問題が深刻となっています。
JICA国際協力機構では、これまで数多く派遣員を途上国へ送り、現地の教育現場を支え、日本との友好関係を築く重要な役割を担う活動を行っています。
JICAの派遣機関は通常長期になりますが、短期プログラムも実施されているので、学生でも夏休み期間などを活用して参加ができます。
5.SDGsボランティアの始め方
大学のゼミやサークルでSDGsを研究している学生であれば、すでに決まっているテーマに基づいて活動ができますが、個人の場合はどのようにはじめたらいいのかわからない方も多いと思います。
ひとりで一から活動を起こすのはとても大変ですし時間もかかります。
個人の場合は、まずはすでに行われているボランティア活動に参加し、SDGsについて学びながら、実践的な活動に取り組んでいく方が効率的です。
この章では、SDGsにかかわるボランティア活動がしたいと考えている個人の学生に向けて、その始め方を説明します。
5-1.取り組むテーマを決めよう
SDGsには貧困、教育、環境、人権問題など17の持続可能な開発目標と、169の具体的なターゲットがあります。
これらの目標やターゲットの中で、自分が取り組みたいテーマを決めます。
大学で学んでいることが活かせる分野、知識を深めたい分野など、SDGsの問題に対して、解決方法はさまざまなので、まずは自分が興味のあるテーマをみつけましょう。
5-2.支援の対象は国内か海外か
取り組むテーマを決めたら、次に、活動する場所や支援の対象を決めましょう。
SDGsの開発目標には、「あらゆる」とか「すべての」といった言葉が付いているように、その対象は狭い地域から世界まで幅がとても広いです。
地域での清掃活動も、途上国での難民支援も、SDGs達成のための貢献活動です。
たとえば、貧困の削減に貢献したいと考えたら、活動に取り組む前に、対象はどこに住んでいる、どういう状況に置かれている人なのかを明確にしておきましょう。
同じ貧困撲滅でも、地域の子どもたちか、途上国の女性かでは、参加するボランティア活動が違います。
5-3.活動の期間は短期か長期か
SDGsに興味を持っている大学生は、ゼミでSDGsについて研究している人も多いと思います。
ゼミの場合は長くて3年ですね。
もちろん3年間研究すれば、SDGsに関する知識は深まりますし、一定の成果も出るでしょう。
でも、SGDsの研究をキャンパスライフのひとつとして終わらせるのではなく、社会人になってからも長期的につづけて行きたいと考えている人は、大学での研究と併せて、地域の社会貢献活動に参加したり、NPOやNGOの活動に参加してみると良いでしょう。
SDGsの「S」はSustainable(持続可能な)
支援する側にも、持続的な行動が期待されています。
6.SDGsは誰もが取り組める身近な課題
先進国から途上国まで、世界の193か国もの国々が、持続可能な社会をつくるために取り組んでいるSDGs。
一見難しい課題のように思えますが、SDGsの課題は身近なものであり、ゴミを減らす、資源を大切にするなど、誰もが日常的に取り組むことができます。
中でも、大学生は長期休みなど比較的自由につかえる時間があり、また、仲間もつくりやすいので、社会貢献にかかわる環境が整っています。
SDGsボランティアを経験することで、学生生活をより有意義なものにできるでしょう。
SDGsに興味のある学生は、最初からおおきなことをしようと考えず、身近でできること、自分のできることからはじめてみてください。
まずは最初の一歩を踏み出すこと。
たとえ小さな行動でも、SDGsの達成に貢献できます。
フィリピンの貧困層の子どもたちを支援している国際協力団体 グローリアセブでは、海外のSDGsに興味のある学生や社会人のために、ボランティアプログラムを用意しています。
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