セブは2011年4月から、ゴミの分別がはじまりました。
しかし、スラム街等ではいまもゴミは無秩序に捨てられているため、リサイクルができずに、ゴミはそのままゴミ山へ運ばれている状況がつづいています。
一方で、環境問題の観点から、ゴミ山は次々と閉鎖に追い込まれています。
このままの状況がつづけば、近いうちにセブにはゴミを捨てる場所がなくなります。
この記事では、セブでゴミ問題が起きている原因について、ゴミ山のスカベンジャーと、廃品回収で生計を立てているスラム街の人たちを支援しているグローリアセブが説明します。
セブのゴミ山で暮らすスカベンジャーの子どもたち
セブにはゴミ処理施設がない
フィリピンでは、大気汚染防止法によって、ゴミの焼却処分はダイオキシンを発生させないなどの適切な整備が整っている施設以外では認められていません。
そして、セブには焼却が認められているゴミ処理施設はありません。
家庭や事業所から集められたゴミは、焼却されずにそのままの状態でゴミ山に積み上げられていきますので、ゴミ山の許容量は限界に達しています。
加えて、2020年に政府から発令された「生態学的固形廃棄物管理法」によって、環境に悪影響をあたえている旧来型のゴミ山の閉鎖が決定。
2016年まで、セブ市内にはゴミ山が3箇所あったのですが、この法案により、2箇所のゴミ山が閉鎖されたため、2021年現在、セブのゴミ集積場は一か所のみになってしまいました。
焼却施設がなく、ゴミ山さえも閉鎖に追い込まれているセブ。
以前は週三回あったゴミの収集日は、現在、週に一回まで減少しています。
ゴミ処理場の閉鎖については、深刻な環境問題をひき起こすゴミ山がフィリピンから消える日をご覧ください。
ゴミの未分別が引き起こす問題
フィリピンのゴミの分別は、Malate(資源ごみ)と、Di-Malata(不燃ごみ)の2種類。
名前のMalateとDi-Malataはタガログ語です。
紙製品や食品の屑などは資源ごみ。
プラスチック製品やガラス、缶類は不燃ごみです。
一般の家庭では、ゴミ箱を二種類用意し、ゴミを分けて出さなければならないのですが、ゴミ箱もないスラム街などでは、ゴミは分別されず、すべてのゴミが一緒に出されています。
ゴミが分別されていなければ、焼却もリサイクルもできず、ただ溜まっていくだけ。
ゴミ問題へ関心を寄せる人が少ないセブでは、分別はおろか、大人も子どもも、道端にゴミをポイ捨てします。
ある程度、お金をもっている中間層以上の家庭では、ゴミは分別して出されていますが、回収業者が、可燃ごみも不燃ごみも一緒にトラックに積んで持って行ってしまうため、分別が行われているかどうかはかなり疑問です。
僕は、ゴミ山でなんどもゴミを運んでくる収集車を見ましたが、すべてのゴミが同じ場所に捨てられていました。
リサイクルされないゴミ
フィリピンのゴミのリサイクル率については、政府からはっきりとしたデータは公表されていません。
しかし、世界銀行の調査では、フィリピンのプラスチックのリサイクル率は28%でした。
リサイクル率が低い原因は、リサイクル製品を原材料として製品化するための技術と資金が不足しているためです。
また、国内で流通しているプラスチック製品には不純物が多く混じっているので、リサイクルには限界があります。
よって、フィリピンでは、プラスチック製品やアルミ製金の原材料は、ほとんどを輸入に頼っています。
リサイクル率が低いので、プラスチックやアルミのゴミは、なんの処理もされないまま、ゴミ山や海に捨てられていきます。
セブ市内のスラム街を流れる河川
セブの河川を汚すスラム街のゴミ
セブのゴミ問題は、スラム街の存在とも関係しています。
セブ市では四半期に一度、市の職員とボランティアによって、河川の清掃が行われています。
2021年9月に実施された清掃作業では、市内の河川から68トンのゴミが収集されました。
(参考)セブデイリーニュース
セブ市のゴミの量は1日約600トンですので、河川に捨てられていたゴミの量は、市全体で出される1日のゴミの18%に相当します。
河川や海にゴミが多い理由はふたつあります。
ひとつは、スラム街から出されるゴミの存在です。
セブのスラム街は、川沿いや海岸沿いにひろがっています。
理由は、川沿いや海沿いは居住地として整備されていないため、無断で住むことができるからです。
スラム街にはゴミ箱はありません。
道が狭く、市のゴミ回収車もスラム街へは入ることができません。
よって、スラムの住人は、ゴミをそのまま川や海に捨ててしまいます。
もうひとつの理由は、川上からゴミが流れてきて、市内の河川に溜まってしまうためです。
川にはゴミを堰き止めるダムはありません。
大雨が降ると川の上流から、樹木やゴミが雨水と一緒に流れてきて、川下に滞留します。
ガラス瓶を仕分けするジャンクショップの子ども
ゴミ問題を複雑にする廃棄物回収の流れ
フィリピンではゴミの回収作業に、おおくの事業者や個人が関わっています。
家庭から出される一般ごみは、行政から委託された事業者が回収し、ゴミ山へ運びます。
ゴミ山では、スカベンジャーがゴミを仕分けし、売れるゴミをジャンクショップと呼ばれる小規模の廃品回収業者に買い取ってもらいます。
ジャンクショップでは、集めたゴミを洗浄や仕分けを行い、規模のおおきい総合資源取扱業者、またはリサイクル業者やメーカーへ持ち込みます。
このゴミの流通の過程には、スカベンジャーなどの個人から、運搬会社、小規模事業者などが複雑に介入しているため、行政では十分な管理をすることができていません。
ゴミが不法な場所に投棄されたり、流通の過程で有害なゴミが混入する可能性もあります。
まとめ (セブからゴミ問題がなくなる日)
日本のゴミ処理技術や回収のシステムは、世界でもトップクラスです。
毎週、決まった曜日に回収車がやってきて、集められたゴミは適切に処理される。
そして、国民も決められたルールに従ってゴミ捨てを行っています。
フィリピンのような開発途上国には、お金も技術もありません。
国民も生活することに精一杯で、環境問題まで意識は働いていません。
でも、希望が持てることもあります。
フィリピンの幼稚園や保育園では、子どもたちにゴミを分別して捨てるよう指導しています。
また、ペットボトルをつかった工作をするなど、子どもたちへリサイクルへの関心をもさせる工夫をしています。
今日明日、セブのゴミ問題が解決することはないでしょう。
でも、子どもたちへの地道な教育によって、いつの日か、セブからゴミ問題がなくなることを、グローリアセブは望んでいます。
子どもたちの写真や活動の様子を、セブ島から発信してます! (ロゴをクリック)